「純米酒を極める」(上原浩 著)
著者は、醸造技術者で「夏子の酒」に出てきた上田先生のモデルになった人。
最初の3行でヤラれました。
この人ほどの達人ともなると、「季節にかかわらず、純米酒に割り水をかけて、燗をして飲む」んだそうです。
(割り水をかける、というのは、水で割ることです。割り水という行為の名詞をかけるという動詞で受けているわけで、追い込みをかける、と似ています)
なるほど、、、。
確かに、日本酒は食中酒としてはちょっと度数が高いような気がしていました。ワインくらい(11〜13度程度)かな、と思う訳です。
しかし、水で割る、という発想がまったくなかった自分のアタマの堅さが情けないですね。
この本は、日本酒(この人は、純米酒以外は清酒であって日本酒ではないと主張)が好きな人なら必読です。
酒の道一筋60年の技術者にして初めて語れる内容に満ちている。経験に裏付けられた断定、断言が素晴らしい。
日本酒の熟成ということに関しても、これまでの思い込みを正されました。
良い純米酒は、春に新酒ができた段階ではまだ味が若く、夏を越して熟成が進んで「秋あがり」の美味い酒になる、というんですね。
ただ、熟成した純米酒の美味さを知らない(なかなかそういう酒はない)のも事実で、これは今後の課題ですねえ。
酒の熟成に関しては、十分な知識がないままに、過去に下記のような文章を書いたこともあります。
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ま、これはウイスキーに限った話ではない。日本酒も同じだ。造ってから3カ月
以内に飲め、とラベルに書いてあるものさえある。最近、倉庫で1年経過した某
有名ブランドの特別本醸造が、いろいろあってウチに回ってきた。せっかくの1
本だったが、日本酒本来の香りが抜けて、ぬか臭いような平板な味になってお
り、半分くらい飲んだものの料理酒にしてしまった。
(http://weblogs.nikkeibp.jp/whisky/2005/01/go_flat.html)
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これは、出荷段階までを製造工程と捉えたいと思っているからでした。
メーカーが熟成させて出すのと、流通過程や家庭での保存などで結果的に熟成するのは、まったく別物だと思う訳ですね。
著者の上原氏は、残念ながら今年5月に82歳で亡くなられました。
あとがきには、
「酒も女も煙草も止めて、百まで生きた馬鹿がいる。私は真っ平だ。これからも通算200石目指して飲んでいきます」
とありました。
1石は180リットル=1升瓶100本。
同氏は休肝日(ビールしか飲まない:笑)を除いて、毎日、純米酒を4合、という生活だったようです。
1日4合ってことは250日で1石。
150石は過ぎていたようですから、志半ばというにはあまりにハイレベルです(合掌)。
「調理場という戦場」(斉須政雄 著)と並ぶ今年のヒットです。
いや、今年は良い本に当たるなあ、、、。ま、単純に読書量が増えているだけか?
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