先日、某大手企業の「ステークホルダー・ダイアログ」(関係者との対話、という意味)に参加する機会があった。
学生、社員と家族、取引先、主婦、株主、メディアといったステークホルダーを一堂に集めて、その会社のCSR(Corporate Social Responsibility)について議論をする、というものである。
参加者は、属性ごとのグループに分かれて、議論を進める。各グループのテーブルには、社員も配置され、質問に答えたり、指摘を直接聞いたりする。
これらの議論や問題点の指摘を今後の企業活動に反映させていく、というのが趣旨である。
僕は、メディア(今は違うんだけど:笑)のグループに入っており、新聞社や去年まで居た会社の人などとともに、主に企業のコミュニケーションという観点から議論を進めた。
印象的だったのは、本当にしっかりと考えてよくやっているんだけれど、それはあまり伝わるものではない、ということであった。
「何をやっている会社なんだかわからない」「CSRレポートで言いたいことが見えない」などなど。
こういう感覚は、社内の関係者同士での話ではなかなか感じられないものだろうし、それをはっきりと感じるためにも、このステークホルダー・ダイアログのような試みには意味があるのだと思う。
とはいえ、このあたりに日本の企業に共通する根本的な問題が含まれているような気がした。
その問題というのは、
1)日本の企業の従業員は基本的に優秀で器用である
2)それゆえ、専門性が要求される畑違いの仕事でも、そこそこのレベルでこなしてしまう
3)日本の企業は人が多い。余っていると言っても良いくらいである
4)新しいこと、畑違いのことであっても、優秀な人が余っているので、社内で解決しようとする
5)しかし、いかに優秀であろうとも、その分野の専門家にはかなわない
6)ある程度まで行くと、オリジナリティやフィードバックが要求されるようになるので行き詰まる
というようなことではないか、と思われる。
これが端的に表れるのが、インターネットである。
「動きが速いし、ネットをどう使えば良いかがわからない」というのは企業のコミュニケーションにかかわる人の本音でもあるだろう。
実に当然のことであって、ネットを専業にしている人にしても、いつも試行錯誤で日々悩んでいる訳である。
この辺は、ネットのプロがいない状態で考え込んでいても仕方がないわけで、外部の専門家に助けを求めるべきだと思うが、それをしている企業はとても少ない。
もちろん、この辺のサービスのプロが少ないのは事実である。
ま、これは、雑誌の会社がWebサイトをやってなかなか上手く行かん、なんてことにもそっくり当てはまるわけですが、、、(苦笑)。
なぜ、外を使おうとしないのか、ということについて、最近、痛感しているのが、上記の3)に書いた「人が多い」ということ。しかもその人たちはそこそこ優秀である、ということ。
そのため、本当に困ってしまうような状況にはなりにくい。おそらく、外部の専門家を使った方がトータルコストは下がるけれど、当面は使わなくても困らないくらいの現実感で回ってしまう。
回っているなら良いではないか、という話もあれど、あくまでそこそこな感じにとどまってしまう。
それと、むしろこっちの方が大事かもしれないが、「結局、社内を見て、社内の論理で回るようになる」ということになりがちである。
今回のステークホルダー・ダイアログでは、環境への取り組みやファシリテーションなどを得意とするNPOが全体を仕切っていた。
事前の連絡等もすべてNPOからであり、対象の会社はまったく出てこなかった。
こういった新しい取り組みをするにあたって、外部の力を使っているわけで、その点は評価できると思ったが、それがCSRというジャンルにとどまらずに、企業のコミュニケーション全体に行き渡るようになれば、もっと良い結果が得られるとも思ったのである。