今年、最も印象に残った言葉といえば、これを置いて他にはない。
「筆は一本、箸は二本」
明治時代の小説家であり批評家である斎藤緑雨の言葉。
原典では、「按ずるに筆は一本也、箸は二本也。衆寡敵せずと知るべし」である。
最近、開高健を読み直しているのだが(なんだか文庫が復刊されているそうですが、そんなのカンケーなく、自宅の古い文庫で読んでいる)、「地球はグラスの縁を回る」「新しい天体」「ずばり東京」のいずれかで発見。二十歳前に既に全部読んでいるのだが、この歳になってその意味するところがよく分かった、という話。
「ペンは剣よりも強しなどというメディアの驕りを一刀両断」というような表層的な解釈だけでも十分に唸るけれど、やっぱり下記のように捉えると、その本質がよりいっそう見えてくる。
http://www.merumoni.city.suzuka.lg.jp/quiz/2002/08.html
「一本の筆は所詮二本の箸には勝てない。筆は夢(希望)、箸は生活(現実)。けれども人間の抱くロマンは、それに向かっていってこそ花開くのだ。無勢(夢)に多勢(現実)のアイロニーを日常の筆(ペン)と箸とで表現した名文句。(訳:衣斐弘行氏)」
ここからさらに、自分なりに考えれば考えるほど、深いところで本質をついていることに、ますます唸らされる。
斎藤緑雨は、1867年に生まれ1904年に37歳で亡くなっている。奇しくも今年は生誕130年であった。
この人の言葉には、「寒い夜だな、寒い夜です、妻の慰めなどこんなもの」「貧乏自慢は金持ち自慢よりはしたない」というものもあって、なんとも言えない味わいに溢れている。
というわけで、このブログのサブタイトルにしてしまいました(笑)。
皆様、良いお年を!
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