イタリアは好きだし、オリーブとかパスタとか好物だし、20年間イタリア車だし、シチリアの赤には目がないのだけれど、さすがに、この2冊を読んだら、そうそうノー天気な事ばかりは言っていられない。
■「イタリア・マフィア」
■「シチリア・マフィアの世界」
1冊目はイタリア人ジャーナリストによるもの、2冊目は日本の研究者によるもの。いやいや、すさまじい。
イタリアのマフィアってのは、歴史的にはもともとはシチリアで大地主制度の下で農民搾取の構造の中から生まれて、政府の統治が調子悪いので自治組織的にどんどん勢力が拡大し、それにしたがって、搾取と勢力争いが目的化してしまった。そういった存在を時の政府や国(外国も含めて)も便利に利用した、という感じですね。
こういう人たちの常として、法より掟を重視し、メンツを何より大事にする。ビジネスモデルとしても、日本のヤクザと似ているのだけれど、アメリカへの移民と第二次大戦(の軍事的な活動)がさらにビジネスの規模を拡大させた。
マフィアがなくならない理由は、差別とはちょっと違うけれど、メンタリティとしては差別と非常に近いものがあるように感じましたね。人間の本質的なところでの必要悪というような側面とでも言ったらよいかもしれません。
ま、ベルルスコーニ首相はオバマ大統領夫人のことを「よく日に焼けている」なんて言ったようだが、マフィアあっての存在らしいし、とにかく、ビジネスはおろか、政治も、バチカン方面も、なにもかもすべてマフィアなしには動かないような感じなのである。
イタリアってのは、旅行したり飯食ったりするには素晴らしいところだけれど、裏の社会の力の強さ、苛烈さは日本とは比べ物にならないということを再認識させられた。裏がある、ってのは人間社会では普通の話かもしれないが、日本のヤクザなんかは、ここまでやらないと思うし、政治家なんかもここまで便利に使わないでしょう。
イタリアの庶民、特にシチリアの人たちには、常に(マフィアに、あるいはマフィアの行動に)怯えているという部分があるんだろうね。そもそも、大物逮捕の時の警官が覆面で顔を隠している(報復で絶対に殺される。実際、果敢に戦った警察関係者はほとんどが殺されている)ってのは、本当は話が逆だと思うのであるな(苦笑)。
写真は、シチリアの美味い赤「タンクレディ」。ネロ・ダヴォーラとカベルネソーヴィニオンの混醸。アーシーで濃厚な味わいが素晴らしいんだけれど、、、。
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