「残念な日々」(ディミトリ・フェルフルスト著、長山さき訳、新潮クレスト・ブックス)
自身が生まれた家の大酒飲みの家族とその周辺の人々の「残念な感じに溢れた」日常を描いた小説。
人生は、こんなに残念なことに溢れている。この人たちとは残念さの方向は違うかもしれないけれど、実は誰もがそうなんだよ、と思わせてくれる本。 舞台は、オランダのフランダース地方。方言が関西弁になっているのは、翻訳者の工夫だね。
第一話のオチが最高だったけれど、個人的にツボだったのは、大酒飲みの叔父が免許を取って「中古の白いアルファロメオ」を買ってきた、ってところと、ノンアルコールビール、カフェインレスのコーヒー、ニコチンの入っていないタバコ。「同様の質の低下が社会全体に広がる様子を見てきた。」だな(笑)。たかだか20年くらい前、中にはインターネットが普通になった90年代後半から2000年代前半くらいと思われる話もあって、その素朴な暮らしぶりにちょっと驚かされる。
筆者は、この残念な生活から一応は抜け出した訳だけれど、やっぱり抜け出した後の生活にも別な残念さがある、ってことも言っている。なにより、自分がそこで育ったこと、そこの一員だったこと、家族であることは、消したり忘れたりできることではないよね。
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