刺身ってのは、美味いもんですが、いろいろとタブーがあるものですね。
北海道であれば、ホッケ、タラ、サケなんてのは、虫がいるってことで刺身では食いません。
サケはルイベで食べますけどね(アニサキスは冷凍48時間で死滅する、ってことが経験的に分かっていたからでしょう)。
関東であれば、サバは生ではなくシメサバにする、など。
でも最近は、分かってるのか無知なだけか、ってチャレンジャブルなメニューを出している店など多数で困ったもんだ、と思っていました。
サーモンの幅利かせぶりにも、「まったく鮭はダメでサーモンなら良いのか?」 などと(実はそうでしたw)。
大手スーパーで長崎産のサバの生が刺身で売っていたり(これはOKなんですね)。
そんな疑問をスッキリ氷解させてくれる論文をツイッターで知りました。
■わが国におけるアニサキス症とアニサキス属幼線虫(PDF)
かいつまんで言うと、こんな感じです。
・海域によってエサが違うのでアニサキスの種類が違う
・サバの例だと太平洋岸は筋肉寄生で危険、九州は内臓寄生でワタを捨てるので安全
・内臓から筋肉への移行もあるが、九州のほうは極めて低率
ということで、サバの生食リスクが低いことが経験的に分かっているので、生で食うのですね。
大手スーパーなんかもそれを踏まえて長崎県産の生サバを刺身で売っているのだと思われます。
また、以下は常識ですが、アニサキスは、
・-20℃48時間で死滅
・塩では死ぬが酢では死なない(シメサバは塩で長時間、酢は短時間が本来の作り方)
・60℃5秒、100℃なら瞬時に死滅
ということなので、太平洋岸のサバはやはり本来は加熱調理が安心ですね。
あと、下記は論文から引用ですが、スケトウダラが低リスクなのは知りませんでした(マダラはやはりNG)。最近のサーモンの謎もこれが答えと思います。スルメイカは良く刺身にしますが、筋繊維に沿ってイカの胴を取り巻くように虫がいるので、目視確認と胴を縦に細く切るようにしますね。
以下、論文から引用(寄生虫名の専門用語のみ分かりやすく変更)です。
スルメイカの寄生率は2–24%,スケトウダラは59–100%と高率にアニサキスが検出された.
スケトウダラの場合,肝臓,魚卵,白子の生食には注意が必要であるが,アニサキスの寄生部位が主に内臓廃棄部位であるため,刺身の喫食による感染のリスクは低いと考えられる.
日本近海産のサケ・マス類の寄生率は50–100%と高率で,多くが筋肉内に寄生していたことから生食は避けるべきである.
また,近年の調査では,北海道産のシロザケに寄生しているアニサキスの99%が筋肉に寄生するタイプであることが報告されている.
しかしながら,アメリカ,カナダ,ノルウェー,チリ,オーストラリア,ニュージーランド,スウエーデンおよびデンマークから輸入された養殖サケ・マス類の調査結果ではアニサキスの生存寄生例が認められていないことから,養殖サケ・マス類の生食に関してはおそらく安全といえる.
北海道産のマサバ,シロサケ,ホッケ,スケトウダラおよびマダラからは,90%以上の割合でアニサキスが検出されている
食文化の中で経験的に生で食うことがOKかNGかが認識されていたわけですが、現在はその知恵と単なる無知が混在しているので、ややこしいですねw
あと、論文には出てきていませんが、ホタルイカなんてのも生は危険です(これも、本来は生では食わないものでした)。虫ではないですが、生牡蠣なんてのもたくさん食うと中る可能性が高まります(大腸菌やノロウイルスの数の積み上げなので)。体調が良ければOKでも、調子が悪いときに食べると中るってこともあります。
と言う訳で、皆様、ご留意ください。
なお、私の場合、父の店(個人経営の居酒屋)で売れ残った毛ガニをもったいないと思って食ったときが、人生で唯一の食中りですが、、、w
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