アカデミー賞作品賞の「ムーンライト」を観た。
これを作品賞に選ぶ、この時期のアメリカでこれを撮る、白人は無関心なその他大勢でしか出てこない、被差別の中にこそ差別がある(白土三平的な世界は人類共通なのか)など、いろいろ考えさせられた。まったく予習せずに観たが、ブラッド・ピットがプロデュースというのが今日学(今日初めて知った驚愕の事実)。
あるシーンで、日本映画みたいなカットと色彩だな、と思ったんだけど、バリー・ジェンキンス監督が一番影響を受けた映画は、大島渚監督の「御法度」なんだそうだ。ムーンライトはゲイが主たるテーマというよりは、マイノリティや弱者の一例としてLGBT的なものを選んだということかなと思った。
舞台は、マイアミのリバティー・シティという地区。マイアミのガラの悪い地区で監督もここの出身だという。日本でいうと西成とか寿町とかそういう感じなのかも知れない。
マイアミ出身のジャコ・パストリアスは、「リバティー・シティ」という曲を書いているけれど、年末に観た記録映画「Jaco」でジャコが海と戯れるシーンの海と、ムーンライトの主人公が泳ぐ海が、なんとなく同じ海に感じられたのは気のせいか。
一つ気になったのは、「いまはジョージアだよ、アトランタ州の」という字幕。本来、アトランタ・ジョージア(ジョージア州アトランタ市)であって逆だと思う。わざと何かの意味を持たせたのだろうか? だとすると、それは伝わらないと思った。
冬にアトランタに仕事で行ったことがあって、冬服ってのもあってけっこう暑く感じたのを思い出した。オールマンBros.の「アトランタの暑い日」って曲がなんとなく分かった気がした。
そのとき泊まったホテルのバーでジャックダニエルのロックを頼んだら、マックのLサイズのコールドカップくらいのグラスにクラッシュアイスを満たして、ソーダとかのガンみたいなのでウイスキーをブシューとなみなみと満たしたものが出てきて、1杯で終わってしまったのも強烈な思い出(column「特大のオン・ザ・ロックス」)。
ムーンライトには「バスはヤバい」ってセリフがあったけれど、これも仕事でニューヨークの今はなきWTCの地下からグレイハウンドのバスでフィラデルフィアあたりに行ったときに、訪問先の人に「バスで来たんですか! よく無事で」なんて言われたのも思い出だ。確かに、デカいスーツケースにネクタイなんてのは、乗客ではオレだけだった。
このときは、ビリー・ジョエルの「New York state of mind」が初めて実感できた。映画「卒業」のラストシーンとか、サイモン&ガーファンクルの「アメリカ」といった歌で、バスにはなんだか親近感があったのだが、そもそもそれが問題だったようだ。
ムーンライトは、淡々としたストーリーと描写なんだけど、いろいろなことを考えさせられたし、アメリカで体験したことをいくつか思い出させてくれた。個人的には、歌われている内容はちょっと違うんだけど、Dr. Johnの「Such a night」を聴く度に思い出す映画となった。一つ問題なのは、作品賞を争ったと言われる「ラ・ラ・ランド」(観ていないが)の影響で「ム・ム・ムーンライト」と言うようになってしまったことだなw ビ・ビ・ビールとかあらゆるところで出てしまうのだが。
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