グレンモーレンジというシングルモルト・ウイスキー、特に最もベーシックな10年の「オリジナル」は、シングルモルトの中ではいわば「メートル原器」のような存在(私の場合)で、ウッドフィニッシュなんかについても、いろいろと勉強させてもらったウイスキーだ。モデルチェンジ前の43度の頃の方がナッツのような香りと味わいが濃いような気がして好きだったけれど、最近は、飲みなれたせいもあるだろうが、バランスが取れていて美味い、と思うようになった。
そのグレンモーレンジの18年を飲んでから、オリジナルを飲む機会があった。これ、普通に考えたら、先に10年を飲んだほうがどっちも美味しく感じるだろう、なんだけど、素晴らしい裏切りであった。
18年はもちろん美味い。シングルモルト・ウイスキーの中でも最高の部類に入ると思う(限定版などは除く)。しかし、18年の後に飲んだ10年のオリジナルは、香りも味わいも、グレンモーレンジであるのはもちろんとして、18年が目指している方向性とは異なる方向性でウイスキーとしての高度な説得力があるのだった。
ま、ウイスキーってのは、長く寝かせれば良いというモノでもなくて、寝かせることによってまろやかになる一方で、失うものもけっこうあるということもある。特にアイラのような強烈な個性を楽しむウイスキーでは、長期間寝かせることで全体に丸くなってしまい「美味いんだけどなんだか物足りない」なんて場合がある。
でもそれは、18年と30年などでの比較、あるいは強烈な個性を持った酒の話であって、暴れたところのない素晴らしいバランスのグレンモーレンジ・オリジナル(10年)が18年にまったくひけをとらないどころか18年とは違う方向性の完成度と説得力を持っていることに驚かされた。
などと、ぐちゃぐちゃ言ってますが、18年のボトルが空いたので、18年は高いからオリジナルのボトルを入れた、ってだけ(笑)。ま、でも、18年の直後にオリジナルを飲む、というのは普段はなかなかしないことなんで良い経験でした。