実は、2020年12月から「FIAT 500 Manuale」に乗っている。「ツインエア」と命名された900ccに満たない2気筒ターボエンジンに5速マニュアルミッションの限定車である。専用の色は、艶消しの濃い緑(ワックスがけ不要なのが良い)。「これは久しぶりに良いかも」と感じて、2020年の秋にディーラーに見に行って即決したのだった。
約1年で15,000km走って既に手足の一部になりつつあり、とても良い買い物だった、と実感している。
FIAT 500は、排気量が875cのツインエア・エンジンとコンパクトな4人乗りのボディがとても「現代的、あるいは今日的」な魅力に溢れていると思っていたのだが、ベースグレード(クルマはベースグレードに実力が出るものだが)にはATしかなく、かつパステルカラーだったりで、どうにも踏み切れなかった。500ベースで直列4気筒エンジンの「ABARTH 595」であればマニュアルもあるのだが、このボディならツインエアをマニュアルで乗ってみたいと思っていた。
Manuale(マヌアーレ:マニュアルの意)は、ほぼベースグレードのままマニュアルミッションを組合せ、ボディカラーや内装(ガラスルーフなど)、ホイールなどが多少の特別仕様というもので、これまで500のツインエアに感じていた抵抗感が拭い去られている感じがしたのだった。ハンドルは右である。
2気筒エンジン(バイクも含めて)、ターボエンジン、2ドアのハッチバック、というフォーマットは、すべてが人生初である。これまでのクルマは、FRは直列4気筒、FFと4WDは水平対向4気筒と4気筒ばかりだった。バイクにしても単気筒を2台乗っただけである。シリンダーは少ない方が良いと思っているのだ。
875㏄の2気筒エンジンのこのクルマは、4人乗りとしてはミニマムサイズであること、さらに「Before EV(電気自動車)」の時代末期のクルマとしてなんとなく象徴的なのではないか、というのが前述の「現代的、あるいは今日的」の心である。実際、高速道路で省燃費を意識して走ると、リッター30kmを超える燃費を記録したりで、ハイブリッドカーと大差なかったりする。
2010年に、21年乗った1989年型のアルファロメオのFR、4ドアセダン、5速マニュアルというクルマ(ALFA75 Twinspark)を廃車にして以降、約10年間に3台のスバル車に乗り、結局、イタリア車に戻ってきたことになる。これはこれでちょっと感慨深い。
アルファロメオに21年乗ったことと自分の年齢を考えると、今回のFIATが「最後のクルマ」になるかもしれないが、結論はしばらく乗ってみてから、ということでちょっと保留ではある(乗ってみたいクルマは他にもないわけではない)。もっとも、電気自動車、ハイブリッド、水素エンジン、コネクテッドカーなどには、まったく興味がないのではあるが。
FIAT 500は、音と振動で存在を主張する素晴らしいツインエア・エンジンにジャストサイズのボディ、というとてもバランスが良いクルマだ。低速トルクが太くて燃費が良いのも好ましい。リヤシートを倒すと広大なラゲッジルームになって実用的だし、小さいクルマというもののお手本のような存在だと思う。こまめにシフトしながらワインディングを走っていると、とても楽しい。新東名の120km制限の区間を制限速度くらいで走ると、時速100kmよりも明らかに直進安定性が増す。
唯一の不満というか改善の余地があると感じているのは、ヒール&トゥがしにくい、というかほぼ不可能なペダル配置である。ま、余裕を持って減速してから、軽くアクセルを踏んで回転を合わせてシフトダウンすれば良い話ではあるのだが。
それにしても、1年で15,000km走行して、オイル漏れなど液漏れ含めてまったくのノートラブル、というのには驚いた。最終テストはユーザーの役割、という感じさえあった1989年型(基本部分は丈夫だったが細かいトラブルはあった)のアルファロメオと比べると、工業製品として隔世の感がある。
そろそろタイヤを新調したくなってきているのだが、195/45R16というサイズは選べる銘柄が限られるので、限定車専用デザインのホイールを外して、ホイール代もかかることを前提に185/55R15あるいは175/65R14にインチダウンすることも検討中だ。クルマのサイズと普段の乗り方を考えると、45扁平である必要はないし、もう少し快適性を重視したタイヤにしてみたいとも思うのである。
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