3年弱乗った2020年型のFIAT 500 Manualeは、素晴らしいクルマだった。コスト的にも環境的にも、使い勝手も、あまつさえ信頼性においてさえも(完全にノートラブル)、非常に優れていた。しかし、最初の車検を前にして、戯れにアルファロメオの中古を探してみたら、これは一度乗ってみたかった、という個体を見付けてしまった。
2003年型のGTVのV6 3リッター、6速マニュアル、色は赤である。ブッソーネV6と呼ばれるアルファロメオ製の名作エンジン(エンジンオイル、食いまくるらしいが)が載ったクルマとしては終盤のモデルで、一度乗ってみたいと思っていたエンジンであり、クルマだった。
人生初のV6エンジンと革張りシート、人生最大排気量の3リッター(2リッターまでしか乗ったことがない)、なんてことで、20年落ちならでは。こんなスペックのクルマは、新車では買う気にならない。
都内のアルファロメオ専門の販売店に見に行って、FIAT 500を下取りに出して、諸経費にプラスほんの少し、という程度の費用で乗り替えることができると判明したので、即決した。
ま、20年前の車であるし、ETCは後付けしてあるものの(ETCがないと首都高に乗れない)、オーディオはCDとラジオ、カーナビ無し、スマフォはつながらない(ガラケーに機種変更したところなので関係ない)、スキッドコントロールの類やアイドリングストップも無し(常にオフにしていた)、クラッチは重い、ハンドルも重い(クイックだけど)、回転半径はデカい(6m)、後席は狭い、トランク超狭い、といった感じではあるのだが、ま、シンプルに「クルマ」らしくて良いのではないだろうか。
さて、どんな付き合いになる事やら。FIATは信じられなく高品質だったのだが、2003年のアルファロメオゆえ多少のことは覚悟しているものの、そんなにたくさん走らなくなったし、1989-2010年に乗っていたALFA75で「10万キロ超えていても、日常的な走行距離が少ないとそうそう故障しないもんだ」という経験則はある。さらに、アルファのエンジンは8万キロ超えたくらいから本調子になると感じたりもしたので、今回のGTVの積算計は89,250キロではあるが、これから数万キロはなんとかなるのではないか、と考えた。
タイミングベルトをはじめとして、テンショナー、ウォータポンプ、サーモスタット、エアコンのコンプレッサーなどなど、長く乗ると壊れそうなところはほぼ交換したうえでの納車ということも、行けるかなと思った要因である。
このガソリン高騰の中、とても燃費の良いFIAT(東名高速でリッター32キロ走ったことがある)から乗り換えるのだから、ま、モノ好き、あるいは環境意識が低いという話もあるが、燃費は普段の自制心にもよるだろうし、乗ってみないと分からない。また、1台のクルマを20年以上使い続けることは、実は環境負荷は少ないともいえる。
販売店から自宅までちょっと(30キロくらいか?)乗っただけでも、エンジンの良さは実感できた。トルクがあるから運転がとても楽だし、6速ミッションのギア比が適切で街中でも乗りやすい。意外にコンパクトで、第一印象は「うわ、運転しやすいな」だった。とはいえ、回転半径が大きいので、街中やスーパーなどの混雑した駐車場に入れるのはなかなか難儀だし、普段、サクッと曲がっていたところも切り返しが必要だったりする。FIAT 500は狭い道が多い都会に向いたクルマだったけれど、こっちは田園地帯でこそストレスなく楽しめるクルマ、という感じである。
タイヤは215/45R17で、例によって(タイヤというのは常に太過ぎる)タイヤをサイズダウンした方が良いかと思っていたけれど、あまり気にならない。17インチだとけっこうなお値段だし、とりあえずこれで行ける所まで。
いい歳になって人生も残り少ないだろうし、クルマを選ぶ時には常に、これが最後のクルマになるかもしれない、と考える。そうしたときに、マニュアルの赤いアルファにもう1回乗りたかった、ブッソーネV6エンジンは一度体験してみたかった、ということで、渋い色(マット仕上げの濃い緑)のFIATから乗り換えたわけだ。たまに乗るなら楽しく乗れるクルマで、ということでもあるし、若い頃に乗ってみたかったけれど買えなくて、あるいはご縁がなくて、ここにきて値がこなれてきたクルマに乗ってみる、という話でもある。
最近、スマフォをガラケーに機種変更したし、携帯といいクルマといい、10年、20年の単位で時を巻き戻しているともいえる。そういえば、オーディオもそんな感じだ。結局、20年くらい前に作った自作スピーカとチープなCDレシーバとフォノイコライザ内蔵のこれもチープなアナログターンテーブルに収れんした。
なお、20年以上やめていたタバコも、キューバのシガリロとパイプに限って、1日に1本か2本(パイプはメンドクサイので一服だけ)喫うようになった。昔からある嗜好品は美味い。特にパイプは、ボウル内側のエージングに時間がかかるので、数十年単位の愉しみなのだ。
ま、でも、21世紀って何だったんでしょうねぇ、、、。21世紀に入ってからの進歩や進化(に見える)モノやコトは、無理して買ったりアジャストしたりはしなかったというのもあるけれど、何の意味があったのか、とも思わずにいられない。
下記は、下取りに出したFIAT 500を買ったときのブログ。Before EVの時代に象徴的だの、シリンダーは少ない方が良いだのと、いろいろ今回とは矛盾した小賢しいことも書いているけれど、ま、エンジンの魅力(ツインエアも素晴らしかった)ってのは、抗い難いものがあるってことだな。