あっという間に1年が過ぎた田舎暮らし。何となくペースもつかめてきて、ちょっと余裕が出てきました。とはいえ、“休みのない1週間”が毎度どんどん過ぎていきます。食事、銀行、買い物など、田舎の不便はそれとして、何か楽しいことを探しつつの毎日です(冒頭の写真は、3月末の夕刻の富士山。夏至に向けて太陽の沈む場所が富士山に近づいていきます)。
春めいてきたと思ったら、標高1000m弱に位置する富士山麓・十里木高原では、おなじみの霧が出るようになってきた。濃霧であればクルマは通らず、人の気配もない。店をちょっと早く閉めて麓の温泉に向かう。ひとっ風呂浴びたらアパートに戻って、ちょっと前倒しで仕事を片付ける――。
去年の3月上旬に御殿場に引っ越し、3月20日に十里木高原に店をオープンして、はや1年。さすがに田舎暮らしにもかなり慣れてきましたが、それでも飲食店とWebの仕事を両方やっていると、休みはほとんどありません。日々がすごいスピードで流れていく感じがします。最近の典型的な1週間はこんな感じです。
・日曜日
11時から18時まで営業(店には9時くらいに入ります)。ヒマな時は、毎週火曜日に納品となるWebの仕事を前倒しで進めます。忙しいと汗だくなので帰りに温泉に行くこともありますが、日曜日はたいてい込んでいます。
・月曜日
意外に忙しいこともあるのが月曜日。でも、翌日が店の定休日なので、売れ残ったポテトサラダなんかをアパートに持ち帰ってビールのつまみにすることが多いですね。Webの仕事があるので、ビールはそれが終わってからですが。
・火曜日
店は定休日ですが、Webのほうのメーンの仕事の納品日。前日までにできるところは進めてはいますが、まずはこれを終わらせるのが先決という日。早く終わればクルマで温泉に行き、戻ってきてまだ風呂上りの感覚が残っているうちにビールですね。納品完了、ってことで近所に焼肉を食べに行ったり。
・水曜日
この日も店の定休日。朝イチのWebの仕事の打ち合わせのために東京都内へ。火曜の納品作業はインターネットがあればどこでもできるので、場合によっては前日にホテルに入って片付けることもあります。
それと、大事なのはメーンバンクでの入金確認と振り込みです。これ、東京出張の大きな目的の1つです。キンコーズでショップカードを印刷したり、床屋に行ったりするのも水曜の出張のときですね。
日帰りの場合、朝イチのアポには三島から新幹線が一番速くて確実ですが、最近では交通費と駐車料金の節約のために、御殿場からの高速バスを使うことも増えました。多少の渋滞は覚悟で早めに出ます。前にも書きましたが、新幹線は片道4000円で駐車料金が1日1000円。高速バスは往復2980円で駐車料金は48時間まではかかりません。毎週のことなのでやはり……(笑)。
午前と午後のクライアントでのミーティングが終わったら、御殿場まで戻ってきて地元のスーパーで明日以降の営業に備えた買い出しです。三島にクルマを止めて新幹線で行くと三島に戻って来ざるを得ないわけで、御殿場までさらに移動しなければならず、その点でもちょっと面倒ではあります。
買い出しについては、普段よく行くスーパーが夜22時まで、業務用スーパーは朝8時から、いざとなったら24時間営業のスーパーもコンビニもある、といったことがこの1年で分かったので、さすがにあまり慌てなくなりました。
・木曜日
休み明けの朝はちょっと早めに店に入り、スープやトマトソースなどの仕込みです。木曜日はたいていヒマなので、土日に備えてミートソースなんかを仕込んだりもします。
木曜朝は、朝10時からのNHK FM「ザ・ソウルミュージック」が楽しみです。木曜は夕方に温泉に行くことも多いですが、この日はよく行くヘルシーパーク裾野「美人の湯」がお休みなので、アパートから歩いても行ける御胎内(おたいない)温泉に行くことも。歩いて行くと風呂上りにビールが飲めます。
・金曜日
木曜日に仕込んだものがあるので、開店準備は比較的楽なのが金曜日。朝10時からのNHK FM「セッション2015」(ジャズのライブを1時間)が楽しみです。16時まで店を営業したら、そこから夜まではWebの仕事を片付けます。金曜にやっておかなくてはならないことがけっこうあるのです。この日は、全部終わらせてからビールですね。
・土曜日
朝9時からのNHK FM「世界の快適音楽セレクション」(ゴンチチのお二人の会話が絶妙。17年目に入ったそうです)を聴きながら開店準備。日曜に備えて仕込みを追加したり、ですね。土曜なので18時まで営業です――。
というような調子で1週間があっという間に過ぎていくのですが、店の周辺は夜は人の気配がないこともよく分かったので、営業時間を平日は16時まで、土日・祝日は18時までと割り切って短くしたのが時間的な余裕につながりました。
また、たまに水曜日の東京でのミーティングが急にキャンセルになったりして「完全オフの水曜日」ができることがあります。これ、うれしい半面、やりたいこと行きたいところはいろいろあるものの、何から手を付ければよいのか判断できずに、結局、ちょっとジョギングしてシャワーを浴び、明るいうちからビールを飲み始める、などということになりがちですね(笑)。世間は平日なので、メールのチェックは欠かせないのではありますが。
あとは近所を散歩する、ですね。クルマで通過するだけでは気付かない意外な発見があったりします。前回触れたバッティングセンターもその1つ。100球くらい打ってくると、かなり汗をかいてスッキリです(ジョギングよりはるかに好きです)。
実は、先日の東京出張の際に、860gの硬式用の木製バットを買いました。たまたま入った野球用品店にちょうど良い感じのがあったもので。その後は、バットを持ったまま食事に行ったり電車に乗ったりだったので、危険なオジサンに見えたかもしれませんが。
近所を歩いていたら昔ながらのお店を見つけました。灯油などの燃料から雪かき道具、酒、たばこ、食料品、洗剤、文房具、尿漏れパンツなどまで、何でもある(けれど欲しいものはあまりない)田舎ならではのお店です。
その店の酒コーナーに「雲海の富士」という見慣れないウイスキーがありました。このウイスキー、御殿場の酒屋さんの組合がキリンの富士御殿場蒸留所に発注したプライベートブランドのウイスキーなのだそうです。富士御殿場蒸留所のモルトだけを合わせたピュアモルトウイスキーですね。
店頭で2000円ちょっとなんですが、数が限られているせいかネットでは4000円を超えていました。2000円なら「真面目に普通に作ったら、ま、少なくともこんな感じでしょう」的なベーシックで悪くないウイスキーですが、これで4000円はちょっとないなと思います。
この辺では、ブレンデッドウイスキーの、これもキリン富士御殿場蒸留所で造っている「富士山麓」が1000円くらいでどこでも買えます。都会では1000円ちょっとで買えるホワイトホース・ファインオールドもバランタイン・ファイネストも、田舎ではあまり見かけないので、おそらくウイスキーでは富士山麓が一番のお値打ちですね。
実は先日、これから出版予定の富士山麓山歩きのガイドブックを編集している方が取材にいらっしゃいました。取材する側にいたことはありますが、取材されたのは初めてです。
初対面の方に取材されると、どうしてここにお店をとか、料理はどこで身に付けたのかといった、お決まりの質問がいろいろとあるわけですが、話が長くなってもアレなので「JAGZYのこの連載を読んでください。全部書いてあります」と大変便利なのでありました。
普段は、お客様にお出ししている料理の写真を撮ることはないのですが(というかそんなことをしている場合ではないので)、日替わりパスタの写真を撮影するということでしたので、これ幸いと私も便乗してスマホで撮影しました。
この日は、ナスとズッキーニのトマトソース。ミートソースもありましたが、ま、茶色よりは赤いほうが誌面で映えるかな、と思いこちらでお願いしました。おいしそうに撮れたので、早速、店のブログにも掲載。書籍ではどういう形での紹介になるのか分かりませんけれど、店がメディアで紹介されるのは初めてなのと地元についてのガイドブックということで、ちょっと期待しています。
というわけで、試行錯誤の期間も終わって定常運転モードに入った感のある田舎暮らしなのですが、今回をもっていったんの締めとさせていただきます。オジサンの気まぐれで始めた田舎暮らしの何てことはない日常にお付き合いいただきまして、本当にありがとうございました。また、このコラムをお読みになって店にわざわざいらしていただいた皆様には、心より御礼申し上げます。それでは、皆様、いつかまたお目にかかる日まで、ごきげんよう。