サントリーのウイスキー「響30年」が、本場英国の「第9回インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(International Spirits Challenge)2004」で最高賞を受賞した。これは、「日本のウイスキーで初めての快挙」なのだという(サントリーのWebサイトへ)。
響30年は、複数のモルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドして味を調えた「ブレンデッド・ウイスキー」である。モルト原酒、グレーン原酒ともに、30年以上寝かせたものを30数種類ブレンドしてあるという。
テイスティング・グラスで飲んだ響30年
(協力:日吉・画亭瑠屋)
通常、ウイスキーの原酒は、8〜10年程度から飲みごろになってくる。そして、12年、18年、20年、30年と、寝かす時間が長くなるほどまろやかで複雑な味わいになってくる。別の言い方をすれば、クセや個性も丸くなっていく、と言える。ここで言う年数は、もちろん樽で寝かせている間のことで、瓶に詰める前の年月のことである。
原酒の樽は、通常は3段くらいに重ねて保管する。醸造所によっては、もっと高く何段にも積み重ねる場合もある。つまり、同じ原酒でも樽自体の材質が違うし、樽の置き場所によって気温も違ったりするので、寝かせていくうちに1樽ずつ味が異なってくる。定期的に樽の上下を入れ替えたりもするというが、それでも樽ごとに味は異なる。
この樽ごとの個性を味わえるのが、シングルカスクと呼ばれるモルトウイスキーである。いっぽうブレンデッド・ウイスキーは、樽はもとより、複数の個性が異なる原酒をブレンドして、飲みやすく味を安定させたウイスキーである。
ウイスキーは、長く寝かせたものほど、一般に価格も高くなる。しかし実は、同じブランドでも、若い方が高くて価格が逆転しているような例もある。製造から流通までを含めた品質管理をしっかりしているので味が安定している、あるいは、醸造所の経営状態などから製造量が少ない時期がある、などの理由によるようだ。
個人的には、17〜18年くらいが好きなのだが、10年でも十分にうまいウイスキーがたくさんある。30年ものとなると、流通量も少ないしそれなりの値段である。結果として、ほとんど飲む機会がないうえ、そうそう売れるものでもないので、保管状態によっては気が抜けたような悪いコンディションのものもある。
というわけで、ウイスキーは何年という数字が大きければよい、というものでもないと思っているのだが、この響30年はブレンデッド・ウイスキーとしては最高ランクの1本であることは間違いない。これを飲んでまずいという人はいないだろう。もちろん、人それぞれに好みはあるので、「好き嫌い」という別の評価軸は存在する。
1杯だけ飲んでみた。BGMは、レッド・ツェッペリンの4枚目(「天国への階段」が入っている盤)とエリック・クラプトンの「461 オーシャン・ブールヴァード」だった。どちらも、約30年前の名盤である(マスターの配慮と思われる)。
まろやかな香りとなめらかな舌触りは、さすがに文句の付けようがない。モルトの存在をかなり感じさせるものの、ブレンデッド・ウイスキー独特の軽さがある。
モルトの味や香りは、意外なことに、ニッカの余市醸造所のモルトに相通じるものがあるように感じられた。ウイスキーは地酒である。これが、日本のウイスキー、日本のモルトの味と香り、ということなのだろうか。サントリーとニッカのウイスキーに思わぬところで共通点を見つけたのは、面白い体験だった。
響30年は、年に2000本の限定販売である。今年の分は既に完売しているようだ。今回の受賞でさらに人気が出るかもしれない。バーで見かけたら、ぜひ1杯、お試しを。
※他のサイトに書いたものを転載しました。