先日、主にネットで付き合いのある知人の結婚披露パーティで、バンド演奏をする機会があった。たまにスタジオで音を出すことはあっても、人前で演奏するのは大学生の時以来で約20年ぶりのこと。その時、最後に演奏した曲がなぜか西城秀樹の「ヤングマン」であった。
コードが分からないので、まずネットで調べてみる。何度か利用したコード集のダウンロードサイト「アディ・ソング・コード」を探してみた。このサイト、歌詞とコードだけが載っているPDFファイルを1曲50円でダウンロードできる、譜面がダメな人間にとってはありがたいサイトなのである。料金は、「C-CHECK」、「BitCash」、「WebMoney」のいずれかで決済する。
残念ながらヤングマンは見つからなかった。さすがに25年前(1979年)のヒット曲だけのことはある。結局、バンドのメンバーが耳でコードを判断して、「出だしはFじゃない?」とか「サビもほとんど同じだなぁ」などと言いつつ、なんとかコードを探り出して演奏した。
歌詞には、「若いんだから、やりたいと思ったことは何でもできる」というような意味の部分があるが、最近、ウイスキーにも若いなりの良さというものがあることを痛感させられた。
「アードベッグ ベリーヤング」──。熟成期間はたったの6年。1998年に樽に詰めて、2004年にボトリングしたものである。
「若い味わい」のシングルモルト
さすがにちょっと暴れ気味な味ではあるが、しっかりとアイラモルトのアードベッグであることを主張している。6年だからといって、安いウイスキーのようなべたっとした味はいっさいなく、シングルモルトならではの重厚で立体的な味わいだ。このくらいの若さでないと味わえない、独特な跳ね回るような元気な感じが楽しめる。
ウイスキーの熟成は、川の石が上流から下流に下ってくるにしたがって、だんだん滑らかで細かくなるのに似ていると思う。それだけ、きめ細かく滑らかでバランスが取れた味わいになってくるのだが、若いには若いなりの、上流にある石でなければ味わえない良さがあるのも事実なのだ。逆に言えば、寝かせることで失うものもある、ということでもある。
アードベッグには、10年、17年、30年などいくつかのバリエーションがあるが、普段、よく飲むのは10年である。かなりスパイシーでアイラに独特のヨード香も強く、最もアイラモルトっぽいシングルモルト・ウイスキーと言われている。
17年も美味いけれど、蒸留所が1980年代に経営難になった影響などで、最近は見かけなくなりつつある。バーで見かけたら1杯は飲んでおきたい酒の一つである。30年は、値段も張るが、寝かせることで得るものと失うものの両方を実感させてくれる酒だと思う。
ちょっと脱線すると、アードベッグは80年代にはほとんど生産しておらず、その後、1997年にグレンモーレンジ社(これもシングルモルト・ウイスキーの蒸留所)の傘下で再び生産を始めた。このため、現在ではちょうど17年が手に入りにくくなっているのである。そして、本格的に再生産を始めて6年経ったところで、これなら、ということで出してきたのがベリーヤングなのではないかと思われる。
アードベッグだけで、6年、10年、17年、30年と飲み比べるのも楽しそうだけれど、先日は、ベリーヤングを飲んだ直後に同じくアイラモルトの「ラフロイグ10年カスク・ストレングス」を飲んでみた。これも、最近気に入っているアイラモルトであるが、そのバランスの良さを再認識させられた。ラフロイグだけ飲んでいると、そのヨード香が十分にワイルドなのだが、、、。
ベリーヤングの生産量は限定約2万本で、日本には正規ルートに限ればそのうちの1600本しか入ってこないらしい。ネットショップで調べてみると、既にほとんど売り切れている。バーで見かけたら、そしてアイラモルトがお好きなら、ぜひ1杯試してみていただきたい。個人的な好き嫌いだけで言えば、5倍の時間をかけて寝かせた「響30年」より好ましく感じたほどである。ちょうど、ワンショットの価格も5分の1だった(笑)。
間違いなく、今年、一番驚かされたウイスキーである。
※協力:日吉・画亭瑠屋
※この連載は2004年から2005年にかけて、nikkeibp.jpサイトに掲載したもののアーカイブです。
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