個性を楽しむモルトウイスキーは良いものだが、ちょっと背筋を伸ばして改まって味わうような感じもある。ラベルの内容などもちゃんと読んだりするし、安くはないのでがぶがぶ飲む感じでもない。普段、気楽に飲みたいときには、やはりブレンデッドウイスキーになる。
大麦で作るモルトウイスキーとトウモロコシなどの穀類で作るグレーンウイスキーをブレンドして、味のバランスを整えたのがブレンデッドウイスキーである。最近でこそモルトウイスキーが普通に出回っているが、かつてはウイスキーと言えばブレンデッドだった。モルト原酒の個性は薄まっているのだが、ブレンデッドにはブレンデッドの良さがある。
水割りで良し、ソーダで割っても良し。濃さも好みで調整すれば良い。ボトルキープしてあるウイスキーで、自分で水割りなどを作って飲むような形式のお店では、ブレンデッド(バーボンも含めて)が嬉しい。なんと言っても、ウンチクなしに肩肘張らずに飲めるのがありがたい。もっとも、たかが水割りと侮れないことも事実。腕のいいバーテンダーに作ってもらった水割りは、明らかに美味いものである。
最近は、スコッチでも国産より安いくらいなので、ブレンデッドの選択肢は広くなったが、いつも切らさないようにしている1本は、ニッカの「フロム・ザ・バレル」である。発売開始から20年くらい経っていると思うが、その当時(就職したばかりの頃)に初めて飲んで以来、気に入ってずっと飲んでいる。価格も2000円を切るくらいで適当なところだ。
フロム・ザ・バレルは、ウイスキーの瓶としてはちょっと変わった四角い500mlの瓶に入っている。アルコール度数は51.4度とちょっと高めである。モルトとグレーンをブレンドし、さらにそれを再び樽で寝かせ、じっくりなじませてから瓶詰めされているという。普通のブレンデッドウイスキーは、アルコール度数が40度くらいになるように加水されるが、フロム・ザ・バレルは樽からそのままの状態なので51.4度なのである。
味は、国産のウイスキーの中では、かなり“渋い”味わいの部類になると思う。甘み抑え目で重厚なコクがあり、水やソーダで割ってもしっかりと芯が残る感じのウイスキーである。アルコール度数が高いので、普通に飲んでいると25%程度飲み過ぎることになる。
最近のブレンデッドウイスキーは、甘みがあって香りが華やかなものが多いのではないかと思う。また、重厚なコクというよりはあっさりした味わいのものが多いような気がする。オールモルトウイスキーなどという名称で、ブレンド用のグレーンウイスキーにも大麦を原料にしたものを使用している製品もあるが、これも優しいすっきりした味わいのものが多いように思う。そんな中で、フロム・ザ・バレルの重厚な個性は、なかなか得難いものだと思っている。
そうは言うものの、たまたま今、自宅で飲んでいるのは、ブレンデッドスコッチの「ホワイトホース」である(笑)。ちょっと末広がりの安定感のあるボトルの「ファインオールド」という安いものだが、これがなかなか侮れない。これも、どっちかと言うと重厚な味わいの部類で、モルト原酒がかなり感じられて飲み飽きない。量販店で1000円台の前半で買えるウイスキーの中ではかなり気に入っている1本である。
こういったブレンデッドウイスキーは、夕食の前に水割りで、夕食の後あるいは寝る前にオン・ザ・ロックで、風呂やジョギングの後にソーダ割りで、とまさに普段着のようなウイスキーなのだ。
ウイスキーには、食事に合う酒というイメージはあまりないかもしれないが、個人的にはブレンデッドウイスキーの水割りは、カレーとの相性が抜群だと思っている。大きめのグラスで氷をたっぷり入れて、いつもよりちょっと薄めに作るのだ。一度、お試しいただければ…。
※この連載は2004年から2005年にかけて、nikkeibp.jpサイトに掲載したもののアーカイブです。
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