「ホイス」という飲み物がある。もちろん、酒である。ホイスと書いてある大きめのグラスに氷を入れ、ホイスと焼酎、炭酸水で満たす。ま、チューハイやサワーのようなものであるが、ホッピー的な感じもある。味は、多少ウイスキーっぽいところもあるが、甘さを抑えた何とも“玄妙”な(笑)感じである。飲み飽きない味だし、あまりアルコールが強くないので、何杯でも飲めるのがいいところだ。
このホイス、たまに行くご夫婦でやっている居酒屋で1杯400円で飲ませてくれる。オヤジさんのホイスの作り方がまた独特。氷とホイスの入ったグラスをシンクの上で左手に持ち、ソーダを右手で顔の前くらいに掲げて、上下させながら豪快に注ぎ込む。その落差、約70センチか? はっきり言ってソーダはかなりこぼれている(笑)のだが、その勢いでよく混ざるということのようだ。
他ではあまり見かけないホイスなので、「ホイスとは一体、何なのか!?」と常々疑問に思っていた。ただ、疑問には思っても、そこは酒の席での思考。翌朝には、疑問に思ったことさえ忘れてしまっているので、しばらくの間、疑問のままだったのである。
先日、珍しく「そういえば」と思い出したので、さっそくGoogleで検索してみた。なんと、大晦日に曙に勝ったホイス・グレイシーより上に出てくるではないか。
■関連リンク 「幻の酒ホイス」とは?
http://www.hoisu.com/hoisu.html
このページを読むと、昭和30年ころにはちゃんとしたビールやウイスキーは高嶺の花であり、庶民のあこがれだったウイスキーをもじって「ホイスキー」、それがホイスと呼ばれるようになった、と書いてある。
なるほど、ズブロフカ(ズブロッカとも。香草をつけ込んだウオッカ。これ、冷凍庫でトロトロにして飲むと美味いですね)をベースに門外不出のレシピでいろいろ入っていると言われれば、あの玄妙な味もなんとなく納得できてしまう。東京・白金の「後藤商店」の社長にしか出せない味なのだという。
この手の飲み物で思い出したのが、北海道の「小原商店のガラナ」(これはコーラに対抗したもの。酒ではない)である。父がやっていた店(第1回の私的なウイスキーの原風景を参照)にもガラナがあった。これも、ネットで検索すると出るわ出るわ…。ま、「ミスター・ピブ」とか「ロイヤルクラウン・コーラ」とか、あだ花(?)的な飲み物、オタク的興味で盛り上がる飲み物は、他にもたくさんあるのだが、ここでは本題ではないので…。
それにしても、ビールやウイスキーが庶民には高嶺の花、というのは泣ける話である。40年以上経った今日でも、その基本的な感覚は、あまり変わっていないという点でも、である。ビールは、発泡酒が主流になり、最近では「第三のビール」さえ登場している。味覚・し好の変化もあるだろうし、税制に合わせて商品開発している、という面もあるのだろうが、ビシっと苦くて味のしっかりしたビールが少なくなっているのは、個人的には残念なのである。
ウイスキーはといえば、ネット販売に限定したレアなものなど、「どうせ量は出ないので、単価の高い路線で行こう」という感じもなくはないが、まだまだ安いウイスキーもたくさんある。例えば、今、自宅にあるのはブレンデッドスコッチの「ハイランド・クイーン」。1本980円である。バーボンなら、「ローリングK」とか「ヘブンヒル」とか1本1000円くらいの価格で選択に困ることはない。
これも個人的なし好だが、焼き鳥をウイスキー(ま、水割りかソーダ割り)で食べようと思っても、焼き鳥屋のドリンクメニューにウイスキーがなかったりする。日本酒や焼酎・泡盛が各地の名酒で充実している一方で、ウイスキー好きにとってはなかなか難しい状況になっているとも言える。
冒頭で触れたホイスを出してくれる居酒屋(ホイスのWebサイトに出ている店ではない)にもウイスキーはない。しかし、ホイスがソーダ割りの代わりになるので、かなり助かっているのだ。
※この連載は2004年から2005年にかけて、nikkeibp.jpサイトに掲載したもののアーカイブです。
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投稿情報: 競馬予想 | 12 月 25, 2009 06:51 午後