最近、iPod shuffleを購入して、大げさに言うと“人生が変わった”ように感じている。どこまでも(って2駅くらいですが)歩くようになったし、通勤電車も多少は楽に感じている。もっとも、電車でイヤホンして、携帯でメールチェックしていたりすると、イイトシしてダメな感じになるのだが…。ま、いずれにせよ、軽くて薄いので持ち運びがまったく苦にならないし、メモリーなので音飛びやワウフラッター(回転ムラ:死語ですね)もない。腕時計さえ捨てたくなるような、辛いジョギングの時でも大丈夫なのだ。
かくして、昔聴いていた曲をたくさん聴くようになったわけである。もちろん最近のも聴くが、中心は昔のものである。多感な時期に聴いていたものを何十年も聴き続ける、ってことなのかも知れない。
25年前にエアチェック(これも死語ですねぇ:笑)したテープをデジタル化しようと、ステレオ音声をピンケーブルで取り込んで、それをパソコンにUSBで吐き出すボックスも買った。明らかに買い物が買い物を呼んでいる…。
このボックス、テープしかない(エアチェックだけでなく、いわゆるナマ録とかも)とか、アナログレコード(SP盤なんかも)しかない、といった貴重な音源をデジタル化するのにとても便利なものだ。テープはワカメのように劣化してくるし、再生する機器は既に修理がきかないなど、メディアには寿命というものがあるわけだが、それを今の時点でデジタル化してしまえるのは、有り難いことである。
で、そんなこんなで、過去にずいぶん聴いた曲を再び聴いていると、酒やウイスキーが歌われた曲がけっこうあるのに今更ながら気づくのである。
まず、サザンロックのレーナード・スキナード。「ロック、あの頃、そして今」で筆者の大竹さんも紹介しているので、詳しくはそっちを読んでいただくとして、高校生の頃は、コピーしまくっていたバンドの一つだ。これを、shuffleで聴くと、トリプルギターがそれぞれ何をやっているかが本当によくわかって新鮮だ。曲は、「ポイズン・ウイスキー」、「ウイスキー・ロック・ア・ローラー」など。いずれも、これぞエレキギターという感じのカッコイイ、しかも初心者でも比較的容易にコピーできる感じなのが素晴らしい。
次は、ジャズのスタンダードから「ストレート・ノーチェイサー」。セロニアス・モンクの名曲だが、なんでこんなの思いつくのか、という旋律である。この曲は、いろいろなミュージシャンがプレイしている。オリジナルのモンクのピアノも素晴らしいが、ヴァイブのミルト・ジャクソンがレイ・ブラウン(ベース)、モンティ・アレキサンダー(ピアノ)、ミッキー・ローカー(ドラムス)と一緒に演奏したライブもかなり気に入っている。ビル・エバンス(ピアノ)とジェレミー・スタイグ(フルート)のデュオも捨てがたい。
「Don't Let the Sun Catch You Crying」という曲は、直接ウイスキーのことを歌っているわけではないが、朝まで飲んで道ばたで酔っぱらって泣いているところをお天道様には見られたくない、というような内容の歌である。多くのアーティストが歌っているが、ドクター・ジョンで聴いている。
曲ではないが、ローリング・ストーンズのキース・リチャーズのことも思い出す。彼は、プロモーションビデオか何かの映像で、ジャック・ダニエルをラッパ飲みしているのが強烈な印象として残っているのだが、来日ステージを見てからは、ステージで動ける身体を維持するために、日常はほとんど酒を飲んでいないのではないかと思うようになった。
ミュージシャンは、才能に恵まれるほど、酒やドラッグでボロボロになる場合がある。ジャコ・パストリアス、アート・ペッパー、エリック・クラプトン(復活して大人気)、ドアーズ、リトル・フィート、ジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョプリン、マイク・スターン(見事に復活。最近、素晴らしいライブを観た)などなど…。shuffleに入るのは、その手の話には事欠かないミュージシャンの作品ばかりなのであった。
バーでも、こういった音楽が流れているわけだが、もちろんshuffleはバーに入る前に外している。
※この連載は2004年から2005年にかけて、nikkeibp.jpサイトに掲載したもののアーカイブです。
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