前回、モノは所有しない、サービスや外部の設備を利用する、というようなことを書きましたが、そうはいっても田舎暮らしにクルマは不可欠。店への「通勤」はもとより、東京への出張、買い出しや保健所などでの各種手続き、ご飯を食べに行くなど、クルマがないと本当に何もできません。今回は、クルマについても「所有」ではなく「利用」、田舎ならではの事情などを紹介します。
朝はアパートから店までの約12km、標高差400m以上のワインディングを駆け上る(安全運転ですよ:笑)。信号は2つしかない。行きの燃費は最悪だが帰りは下り一方。ちょうど足して2で割ったくらいが普段の燃費(12.5km/Lくらい)になる――。
実はクルマについては、「4気筒/4ドアセダン/MT/FR」のもの以外は、趣味という意味では今でもほとんど興味がありません。既に絶滅に近いフォーマットだけに、21年乗ったそのフォーマットのクルマを廃車にして乗り換えた今のクルマ、残念なことにFFです。それでも、4気筒の4ドアセダン、マニュアルミッションまでは死守。4気筒ではありますが、以前のクルマは直列エンジン、今のは水平対向です。
21年付き合った前のクルマは、エンジンは素晴らしい状態だったのですが、さすがにパーツがないなどの事情で泣く泣く廃車に。20年以上クルマについて思い煩うことなくいられたわけで、その点は幸せだったのですが、最近のクルマについては浦島太郎な状態。今のクルマを選ぶに当たってはかなりいろいろ調べました。結果的にはそれなりに気に入っていますし、国産の安価な小型セダンの中では、エンジンやハンドリングにきめ細かさが感じられるコストパフォーマンスの良いクルマだと思います。
FFではあれど、水平対向エンジンなので構造的に、FFの弱点である「トルクステア」(カーブなどでアクセルを踏むとハンドルが取られる)がほとんどありません。エンジンは1.5リッターと小排気量なのでトルクは細いのですが、よく回ります。水平対向エンジンは、これも構造的な優位ですが、振動が少ないので直列エンジンよりも1000回転くらい上の領域までストレスなく使えます。ハンドリングも、昔とは違ってFFなりの運転の工夫をしなくても、ステアリングを切れば切るだけ素直に曲がってくれます。基本が同じシャーシで2倍以上のパワーのモデルもある車種の最小排気量モデルなので、エンジンに比べてシャーシが勝っているようで、コーナーでいくら踏んでも安心です(いや、安全運転ですよ:笑)。
前回、モノは所有しない、サービスや外部の設備を利用する、というようなことを書きましたが、そうはいっても田舎暮らしにクルマは不可欠。店から一番近いコンビニまでクルマで10分くらいかかります。ですから、かなり高齢の方でもクルマは1人1台。「こないだ、溝に落ちちゃってさ!」などと豪快に笑い飛ばすおばあさんもいらっしゃいます。
アパートから店への「通勤」はもとより、東京への出張(東京まで走ったり、三島駅に置いて新幹線で行ったり)、食材などの買い出し、保健所などでの各種手続き、請求書などの郵送、ご飯を食べに行くなど、クルマがないと本当に何もできません。
実は今のクルマ、購入せずにリース契約しています。これも所有ではなく利用の一例です。契約したのは、田舎暮らしを始める前のことですが、これも結果的に悪くない選択だったと思っています。
ごく小さい規模ではありますが会社を経営しているので、一気に金が出て行くこと(キャッシュフローの悪化)は避けたいものです。また、減価償却対象になるような資産を計上をしたくない(クルマだと償却に6年かかります)という理由もあって、リースを選びました。月々一定金額のリース代を支払う方が、資産計上して減価償却するよりも面倒がありません。会社の経費というのは一定金額で先まで読める、月次などの短い期間でコストとして処理してしまえる、というのが一番ありがたいのです。
もちろん、本当に気に入ったクルマであれば、大事に乗ってメンテナンスをしっかりしてその1台に長く乗るべきでしょう。環境負荷を考えると、それが最もあるべき姿なのだと思います。21年乗った前のクルマにしても、エンジンなどの主要部分にはほとんど問題がなく、燃費も悪くはありませんでした。しかし残念ながら、そういう“ほれ込める”クルマは今やほとんどなくなってしまいました。冒頭で書いたような個人的な趣味と金銭的に購入可能な水準の問題でもあるので、人それぞれではありますが。
そういうわけで、長く乗れるクルマ(また20年乗り続けると、人生最後のクルマってことにもなりそうですし)を諦めて5年リースを選択したのですが、クルマのリースは個人的には初めての経験。メリットがたくさんあることが分かりました。
リースでは、購入時の税金や毎年の自動車税、定期点検や車検の費用、その際に必要になるオイル交換などの基本的な消耗品代がリース契約の中に含まれています。従って、毎月のリース代金のほかにはクルマを維持するための費用はほとんど発生しません。5年リースでの支払いの総額も、ボーナス払いなし60回払いのローンで購入する場合とあまり変わりません。車検や税金(毎年5月に来る自動車税は忘れがちで痛いですよね)が含まれているため、個人的にはクルマの維持費で“モノ要り”になる時期から無縁でいられる、という割安感がリースの最大の魅力だと思いました。会社経営の面でも、経費の変動を抑えることができます。
もちろん、任意保険は別途必要ですが、万一の事故の時も、リース会社がクルマの所有者なので保険会社とリース会社の間でビジネスライクに話を進めてくれます。実は、先日、駐車場に停めていたらバックしてきたクルマにぶつけられたのですが、現場に居合わせたのでそのままリース会社に連絡して修理に。クルマがないと生活も仕事も成り立たないので修理期間中は代車も手当してもらいましたが、これらの交渉はすべてリース会社がやってくれました。
当然ですが、デメリットもあります。普段は忘れがちですが、基本的に自分のクルマではないことがその1つ。パーツを好みに交換するなどのカスタマイズは、しないほうが無難です。走行距離によるタイヤの劣化も、ハンドリングのフィールではなく、溝が何ミリ残っているかで判断されます。「ああ、タイヤがタレてきたなぁ」と思っても、「まだ規定以上の深さの溝が残っています」となるので、どうしても交換したかったら自腹ということになります。ですから、趣味性が強いクルマ、ほれ込んだクルマであるならリースにはしないほうがよいと思います。反対に実用を重視して使うならリースには良い面がたくさんあると思います。
リースの場合、リースアップ時に次をどうするか、という問題があります。ローンの場合は、払い終わったら買い換えない限りその後は金銭的に楽ですが、リースの場合は再リースあるいは乗り換え、ということになります。ここはまだ未経験なので何とも言えない部分ですが、自動車メーカーとしては「台数が出たほうがうれしい」わけで、乗り換えが“お得”に見えるような仕組みをいろいろ用意しているようです。
リースアップ時には、クルマの状態を査定されます。キズやヘコミなどいくつかの減点対象の項目があります。実は、新車時の納車1週間目くらいのときにスーパーの駐車場でいわゆる「ドアパンチ」を食らってしまい(これは当て逃げで泣き寝入り)、フロントフェンダーが結構へこんでガッカリしたのですが、減点査定は10万円までは免責ということでこのくらいは問題ないようです。
減点対象の項目には、横浜での契約だったせいかもしれませんが、スタッドレスタイヤへの換装というのもあります。富士山麓や御殿場周辺は、冬はけっこうな雪が降るので、去年の初冬に購入したスタッドレスをそのまま履いているのですが、リースアップ時には夏タイヤに戻すか減点を受け入れるかのどちらかです。
リースでは、車両価格とともに月間走行距離もリース料を決める大きなファクターです。私の場合、月に1000kmの契約です(1250km、1500kmなどもあり月額リース料が違います)。5年リースなのでトータルで6万km以内、ということになります。それ以上走った場合は、km単位での精算です。横浜に住んでいた頃は月に数百kmだったので、その時の余裕が残っているため、積算値での距離制限には当分ひっかかりそうもないのですが、最近では東京往復があったりすると月間走行距離が1200kmを超えたりするようになりました。
ここまで、クルマのリースについて書いてきましたが、これは田舎暮らしというよりは、むしろ小さな会社を運営するうえでの工夫の1つとしての「所有より利用」のお話でした。田舎暮らしという切り口で考えると、クルマ選びの基準が大きく変わったと実感しています。
具体的には、非舗装路や大きな段差、急な坂、積雪、霧や豪雨といった都会ではあまり考慮しなくてよい道路事情や気象条件への対応がまず挙げられます。その他、DIYのお店で資材を買ってくる、食材や酒類を大量に仕入れたり届けたり、という場合には荷物も積めなくてはなりません。田舎では都会よりも“道具”としてのクルマの能力が問われます。
FRの4ドアセダンなどと趣味のことばかり言ってもいられない感じになってきました。例えば大雪なら乗らなければよいのが都会のクルマですが、田舎ではそういうわけにもいきません。雪が降ったら四輪駆動車でないと登れないような坂も結構あります。都会でのクルマ生活とは全く違う環境が、クルマの選択にも影響します。
これまでは、四輪駆動は同じ車種なら重くなるし、走り出すときは楽でも、止まるときはさほどメリットはない、などと考えていましたが、ちょっと考えを変えつつあります。実は今のクルマ、四輪駆動モデルもあったのですが、車重が重くなるのと必要性が感じられずあえてFFを選んだのですが……。
もう1つは燃費。日常的にクルマを使うわけで、しかも、通勤その他で毎日約30kmは確実に走ります。走行距離が長くなると燃費はコストを左右する大きな要因です。都会では走行距離がなかなか伸びないので、割高なハイブリッド車などを買っても燃料代で割高な部分を取り返すのは至難の業です。でも、走行距離が伸びる田舎なら、ハイブリッド車の燃費の良さで短期間に取り返すことができるかもしれません。
ちょっと計算してみました。月間1000kmをリッター12km台とすると80リッターくらいのガソリンを使います。レギュラー170円(高くなりましたねぇ)として1万3600円。ハイブリッド車で燃費が平均リッター20kmになると仮定しましょう。ガソリンは50リッターでOKです。8500円ですね。その差、約5000円。これを5年間60カ月続けるとすると30万円です(ちなみにリッター25kmとすると約40万円)。つまり、月に1000km走っても、車両価格で30万円以上高いのであれば、ハイブリッド車はまだ割高に感じられます。
もちろん、こういう計算だけでクルマを選ぶわけでもないですし、クルマ自体が多少割高でもガソリンをなるべく使わないことを優先して考える、というアプローチもあります。実際には、欲しいと思うハイブリッド車がなかなかない、という問題もありますが。
これまで、いわゆるSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)なんて誰が乗るんだよ、と思ってトータル約30年間セダンに乗ってきたわけですが、田舎に暮らすようになってSUVも「便利かも」と思えるようになってきました。四輪駆動の軽ワンボックスなんてもの悪くなさそうです。
というわけで、現在、リースアップを1年前倒して次を検討しようかな、という段階(笑)。次回は、いまどきの飲食店には“絶対に”不可欠な「iPad」について書いてみたいと思います。それでは、また次回までごきげんよう。
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