飲食店の運営に不可欠なのが、レジとカード決済、それに音楽(BGM)ですね。実はこれ、いまどきは全部「iPad/iPad mini」で、それも1台で済んでしまいます。音楽はiPadでインターネットラジオ、レジの売り上げはiPadからネットに保存、クレジットカードもiPadで読み取ってネットで決済。「クラウド」の端末としてのiPad、大活躍なのです(冒頭写真は、ちょっとかすんだ初夏の冨士山)。
午後9時くらいに店をクローズして、ルーターの電源を落とす。しばらくして、iPadから流れている店内のBGMが途切れる。この間、約20秒。インターネットラジオのデータが、それだけバッファリングされていることが分かる。照明を消して、iPadの電源も落として店を出る――。
飲食店の運営に不可欠なのが、レジとカード決済、それに音楽(BGM)ですね。いや、ほかにもいろいろありますが、今回はこの辺りのお話を少し。
実はこれ、いまどきは全部「iPad」(iPad miniの一番安いWiFiモデルでOK)で、それも1台で済んでしまうのです。音楽は、メーンのオーディオセットは捨てたとはいえまだ残してあったお気に入りの英国製の小さなアンプと、ペアで2万円台のティアックの小型の同軸2ウェイスピーカー(設置場所の制約で新しく購入しましたが素晴らしいコストパフォーマンスだと思います)、そしてプレーヤはiPadという機器構成です。
店内で流している音楽はインターネットラジオ。CDからリッピングしたものではありません。ジャズやロックといったジャンルごとに、チャンネルは無数といってもよいくらいあって、一日中流れています。だから、厨房が忙しいときでも、かけるCDやレコードを気にする必要がありません(ごくたまにネットが途切れたりしますが、そこはインターネットのご愛嬌)。
お気に入りは「JAZZRADIO.com」のBluesチャンネル。ディープなブルースばかりかと思ったら、意外にエリック・クラプトンなんかもよく流れます。曲によってキーは違えど、基本3コードで似たようなものなので、ヒマな時は店に置いてあるギターで勝手にアドリブを弾いたり、ですね(笑)。歌詞も「Goodbye everybody ~♪」とか「Goin' to Chicago ~♪ 」などとけっこう似たり寄ったりです。
個人的にはブルース系が好きではありますが、営業時間中はお客様の好みもあるでしょうから、幅広い人にとってあまり気にならないようなジャンルのチャンネルを選んでいます。スムースジャズ系やボサノバなどですね。
最近、駅前のそば屋などでハードバップとかビッグバンドなんかが流れているのに違和感を禁じ得ないのですが、「朝からクレオパトラの夢かよ」などと我々世代にとっては気になってしょうがない音楽も、歌詞はないし知らない曲だし、ということで、多くの人にとって最も気にならない音楽なのだそうですね。飲食店のBGMにジャズが選ばれているのはそういう理由であると聞いたことがあって、命を張って演奏して早逝したミュージシャンもたくさんいたのにと、ちょっと複雑な心境でした。
それと「PM RADIO」というチャンネルも素晴らしい。PMは、ギタリストのパット・メセニーの頭文字。彼自身のWebサイトで、新旧の曲をランダムに流しています。パット・メセニーは、最近のジャズ界の巨星ですね。1990年のライブ・アンダー・ザ・スカイや2004年くらいの東京国際フォーラムでのコンサートなど、鳥肌が立ったのを今でも鮮明に覚えています。
次に、お勘定には不可欠なレジ。これもiPadがレジ端末になる「ユビレジ」という店舗用の売り上げ管理システムを使っています。パソコンでネット上のサーバーにメニューと価格を設定。売り上げはサーバーに保存されるので、集計は別の会計担当者に任せることができます。1日の締めを閉店後に計算しなくてよいわけです(ま、今のところ暗算でできるくらいですが:苦笑)。
ユビレジでは、パソコンでネット上のサーバーにアクセスしてメニューを設定すると、即時にiPadのメニュー画面が同期して、価格やメニューが更新されます。あまり品数を増やすとスクロールしたり探したりが面倒ですが、そんなに多様なメニューは用意できないので「ま、ちょうど良いかな」といったところです。
これまで、客として訪ねたいくつかのお店でiPhoneやiPadで会計しているのを見ていたので、「これは良い!」と調べてみたら、ユビレジだけではなく、他にもいろいろあることが分かりました。iPadは、店舗端末のプラットフォームとしてかなり一般的になったようです。
ユビレジには、レシートプリンター、キャッシュドロワー(会計時にガチャンと開く、お金を金種ごとに分けて入れておく引き出し)なども用意されています。周辺機器用のベースステーションがあって、iPadとは無線LANによりワイヤレスでつながります。設定もとても簡単。店ではADSLでインターネットに接続されている無線LANルーターとベースステーションもワイヤレスでつながっているので、iPadからはインターネットへも周辺機器への通信もワイヤレスでOKです。とりあえず、キャッシュドロワーはそれなりの価格なので、つないでいるのはレシートプリンターだけではありますが。
ユビレジの場合、有料サービス(月額5000円)を利用すると過去データがキープされて、売り上げの詳細な分析なんかもできるようになるのですが、とりあえずそれほどの規模の商売ではないので、いまのところ3日間だけ保存の無料サービスで済ませています。
お店の運営でもう1つ大事なのが、クレジットカード決済です。「楽天スマートペイ」というサービスを利用しており、ほぼすべてのクレジットカードに対応しています。カードリーダーは、よく見る据え置きタイプではなく、iPadのイヤホン端子にカードリーダーを差し込んでカードを読み取ります。イヤホン端子に差し込むので、カード決済のときだけは音楽が途切れてしまうのが、弱点といえば弱点ですね。
金額を打ち込んでカードを読み取った後、iPadの画面上でお客様に手書きでサインをしていただきます。決済はこれで完了。とても簡単ですし、客席にiPadを持って行ってその場で完了します。
楽天スマートペイのメリットは、iPadで手軽にできることをはじめいろいろありますが、最大のメリットは「楽天銀行の口座とセットで利用すれば」(ここ大事です:苦笑)、売り上げが翌日入金になることです。
普通、カード決済の入金は最長で約50日後です。つまり、最長50日間は売ったはずのモノの代金が入ってこないわけです。仕入れも経費も掛かっているので、現金仕入れが基本のお店なんかではカード利用は不可にしていることがあります。でも、翌日入金ならほとんど問題もありません。決済手数料は3.24%、振込手数料を引かれることもありません。
クレジットカードは、お客様の支払い方法の選択肢を増やすのはもちろんのこと、この連載の初回にもちょっと書きましたが、田舎のことゆえお釣りを用意しておくのがなかなか大変なので、その点でもありがたい存在です。
手数料も3%台の前半で、5%や7%のケースもあることを考えるとリーズナブルです。ネット銀行抱き合わせで楽天に囲い込まれてしまった、と言わざるを得ないのではありますが、カード利用者からの引き落としの前に楽天が肩代わりして店舗側に払ってくれるわけで、かなりありがたいサービス。どういうキャッシュフロー&ビジネスモデルなんでしょうか? サービス提供のために運転資金の借り入れなんかしていたら逆ザヤになりそうで、お金のある会社ならではのサービスだと思います。
ただ、カード利用の控えは、ご希望の方にはメールで送信することでご勘弁いただいています。その場合、iPadでサインの後にメールアドレスを入力していただきますが、iPad側には個人情報やカード情報は一切残らない仕組みになっているとのことです。
紙の控えが出せないのは、専用のプリンターが高価(それでも2万円台ですが)なため導入していないからです。楽天スマートペイの加盟店には、前述のカードリーダーと「カード使えます」の三角ポップやステッカーをタダで支給してくれるわけで、その辺のコストもプリンターに盛っている気がしないでもないですね(邪推かもですが:笑)。
昔ながらのレジの場合は、中古でもけっこうなお値段なわけで、その他にカード会社のクレジットカード読み取り端末を設置したりなんだりと、飲食店のお勘定周りはけっこう面倒なのですが、それがiPad1台で済んでしまうのですから、何ともありがたい世の中です。iPadにはほかにもいろいろ機能がありますし、アプリを入れれば用途は広がるわけですが、店のiPadはレジ、カード端末、音楽プレーヤ以外には使っていません。
個人的にはタブレット端末としてGoogleの「Nexus 7」を持っていて、電子書籍やSNSなどで日常的に使うのはiPadではありません。過去にiPadとNexus 7を同時に購入して比較し、アップルの世界がちょっと窮屈に感じたのでiPadを手放したという経緯があります。つまり、iPadは店用に買い直したわけです。
個人の自由な利用の場合には窮屈に感じられることも、業務アプリの世界では気になりません。多くのベンダーが、iPadを主力プラットフォームと認識して幅広い業務ジャンルに対応したシステムを提供していますし、ビジネス用にはiPadだと実感しました。
蛇足ですが、iPadは東京・渋谷のビックカメラで購入。たまっていたポイントを全部使ってかなり安く買えました。アップル製品はポイント還元がないので、ポイント残高がスッキリとゼロになり、心残りなくビックカメラのない田舎に移ったのでした(こういうポイントとかがちょっと残ってたりすると、なかなかに落ち着かないモノです)。
いずれにしても、音楽はネットで受け、レジの売り上げもネットに保存、クレジットカードもネットで決済なわけで、「クラウド」の端末としてのiPad mini、定価2万円ちょっとなのに大活躍なのです。次回は、御殿場周辺のエネルギー事情と、それに関連して富士山麓ならではの温泉の話などを予定しています。それでは、次回までごきげんよう。
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