この連載の最初の方で「コンビニが冷蔵庫」などと言っていましたが、今や冷蔵庫どころではない依存度になってしまいました。富士山麓で開業した飲食店の月次会計処理をしていると、レシートの数は圧倒的にコンビニのものが多いですし、ほぼ毎日寄ります。今回は、酒や食料品などにとどまらない、田舎ならではのコンビニ依存な生活を紹介します(冒頭の写真は盛夏の富士山。最も雪が少ない時期。ここまでスッキリ見える日は少ない)。
アパートから自分の店に向かう途中、最初の信号の交差点にあるコンビニに寄るのがほぼ日課になった。氷や牛乳など、どこで買っても大して変わらないものを仕入れる。ドリップ式の100円コーヒーとサンドイッチくらいのチープな朝食も楽しみの1つだ――。
朝、店に向かう時は、途中にあるコンビニにほぼ毎日寄ります。まず、どこで買っても大して変わらない氷や牛乳などを仕入れ、キャベツ、ピーマン、タマネギなど、ちょっとした野菜も買うことができます。イートイン・コーナーがあるので、カートリッジをセットしてドリップする100円のコーヒーとサンドイッチくらいの簡単な朝食もコンビニで済ませます。
夜、店の帰りには、アパートで飲む酒やツマミなどを購入。そもそも、田舎のことゆえ商店自体がほとんどありません。自分の店の閉店後に酒を買えるお店はコンビニだけ。24時間営業のスーパーもありますが、ちょっと遠い。アパートからも店からも、一番近いお店はコンビニ。それでも店からはクルマで10分、アパートからは約1kmくらいありますけれど……。
飲み屋さんもほとんどない地域なので、コンビニのワイン、コンビニで買えるウイスキー、コンビニ限定販売のビールなど、コンビニで手に入る酒が普段飲む酒の大半を占めるようになりました。
ビールでは、「セブンイレブン」限定(最近はコンビニとメーカーのコラボ商品が多いですね)の「アサヒ ザ・エクストラ」がアサヒなのに濃い、ってのが意外でよく買います。他では、いまどき珍しく苦味を感じさせてくれるキリンラガーを今さらではありますがちょっと見直しています。ビールは、都会に住んでいた頃は、350mlの缶1本でいいや、って感じだったのですが、最近は、ロクに食うモノがないってこともあり、500mlを2本とかが普通になってしまいました(苦笑)。
ウイスキーは、コンビニでいつでも買えるフルボトルのまともなモノとしては、サントリーの角瓶とジャックダニエルくらいでしょうか。それと、さすがにキリン富士御殿場蒸溜所のお膝元だけあって、ブレンデッドウイスキーの「富士山麓」。これは、近くにあるどこのコンビニでも売っています(度数は50度、味もなかなかなんですが、内容量が600mlと100mlほど少ないのが難点と言えば難点)。
角瓶は、レギュラーと白、黒の3種類がありますが、たいてい黒角を買います。何と言っても黒角だけはアルコール度数が43度(他は40度)です。黒角は、キーモルトが「山崎パンチョン」というサントリー山崎蒸溜所のモルトウイスキーです。
パンチョンというのは、サントリーが熟成に使っている樽(たる)の種類の1つで、その中でも北米産ホワイトオークを使った大型のもの。白州蒸溜所のオートメーションの貯蔵庫には入らないサイズです。大容量でじっくりと熟成するためか、クリアさと力強さを兼ね備えた素晴らしいモルトだと思います。以前に飲んだ1993年蒸留の限定ボトルのパンチョンは、この数年に飲んだシングルモルト・ウイスキーの中でも屈指の1杯でした。ということで、黒角にもそのしっかりした味わいが感じられます。
ジャックダニエルは、劣化が進む海外のウイスキーの中では品質をキープしている数少ない銘柄だと思います。ストレートやロックも良いですが、ソーダで割った「ジャックソーダ」が普段飲みには好ましいですね。ジャックダニエルの品質が落ちない背景には、良質な樽材を貸し付けているスコッチメーカー「グレンモーレンジ」の存在があるのかなと思っています。全くの推測(笑)なんですが、以下、ちょっとその根拠と思っていることを。
スコッチウイスキーは、北米でバーボン(ジャックダニエルは厳密にはテネシーウイスキーですが)などを1回熟成させた樽を使って熟成させます。バーボンには、未使用のホワイトオークを使うというレギュレーションがあります。グレンモーレンジは、そうした樽の「ウッドマネジメント」に定評があり、北米産の良質なホワイトオークをジャックダニエルに貸し付けて、ジャックダニエルの熟成に1回使った後、その樽をスコットランドに送ってグレンモーレンジを作っています。つまり、グレンモーレンジの樽材の品質基準がジャックダニエルの品質にも影響しているのではないか、と思うのです。
ワインは、これはもう「コンビニ・ワイン」というカテゴリーを作りたくなるほど。1000円未満、3ケタの価格で普段飲みには十分なものがたくさんあります。個人的な赤ワインのベスト3は、セブンイレブンのプライベートブランド「ボルドー」、チリの「ヴィニャ・マイポ」、「コノスル」の自転車のラベルのヤツですね。3本とも650円から850円くらいです。問題は、安いのとそこそこの味なのとで、毎晩1本空けてしまうってことくらいでしょうか。せっかく保存に便利なスクリューキャップなのに(笑)。
ま、チープなワインではありますが、ツマミも安いハムとチーズくらいなのでちょうど良いのかもしれません。たまに、仕事で東京に泊まってちゃんとしたお店でちゃんとしたブルゴーニュなんか飲むと、心底「うまいなぁ」と思いますけれど。
白ワインは、コンビニでは店によっては冷やしてなかったりでイマイチなんですが、赤で挙げたコノスルの白なんか悪くないと思いました。ただ、赤よりちょっと甘口が多いかな? 白ワインを冷やしてくれているような店では、スプマンテ(イタリアのスパークリングワイン)も冷やしてあったりで、これも開けてしまったら飲み切りになりますが、とてもありがたいですね。白ワインやスパークリングワインを冷やしているコンビニはポイント高いですね。
冒頭でもちょっと触れたように、氷や牛乳、酒、ソフトドリンクなど自分の店でお出ししているものの仕入れも、一部コンビニで済ませます。安くはないですが高くもありませんし、ビールなどは回転も早いので、変な酒屋で古いのをつかまされるようなリスクはありません。缶ビールの場合、安い店を探せば1本当たり20円くらい安く買えますが、大量に仕入れるわけではないので、あまり気にせず不足しそうなときにその分だけ仕入れています。
自分で食べるものは、ちょっとしたツマミしか買いませんが、それでも、夕食がコンビニ中心になってしまう夜というのはけっこうな頻度です。酒のさかなになりそうなものを買うわけですが、これがなかなか面白い。「ままかり」や「いか刺し昆布」などは、さすがはコンビニだけあって「世界の食材」を集めて作っています。ままかりでは、サッパと生姜はタイ、菜の花と木くらげは中国、魚卵はアイスランドとノルウェー、といった具合です。国産なのは千切りになったニンジンだけ。ままかりというものをそうまでして作らなきゃならんのか、とけっこう疑問ではありますが……。
総菜で気に入っていてよく買うのは「焼売と肉団子が4個ずつ入ったパック」(サークルK)と「豆のサラダ」(セブンイレブン)ですね。反対にまず買わないのは、弁当類、揚げ物の類、お菓子やパン。アパートではお湯を沸かさないことにしているので、カップ麺の類いも買いません。
食べるものと酒に限りません。コンビニでありがたいのが銀行ATM。振り込みだのなんだのと公私ともに毎月しなきゃならんことがけっこうあって、ATMがないと大変に困ります。しかも、メーンバンクのATMは三島(クルマで40分)まで行かないとありません。通帳記帳だけは出張で東京に行くときにすることにして、コンビニでできることはなるべく済ませます。振込手数料が若干高いのですが、ま、仕方ありません。
サークルKには「イーネット」のATMが設置してあり、私のメーンバンクの口座から振り込みが可能です。ICキャッシュカードに保存してある振込先リストは読んでくれませんが、振込先を控えていけばOKです。この点、セブン銀行は振り込みができない(他の一部銀行口座からはできるのですが)のが残念です。酒や食料品はセブンイレブンが最も充実していると思いますが、この点ではセブンイレブンはアテになりません。
普段の支払いは、コンビニとネット銀行を使っています。メーンバンクのネットバンキングは、法人の場合、従業員は代表者1人だけの小さな会社であっても、月額利用料がかかるのと、利用ブラウザーに制限がある、そこまで不要では?と思われるほどのセキュリティー対策で使いにくい、などの理由で使っていません。
ネット銀行については、前々回のiPadの時に触れましたが、店でのカード決済の入金に不可欠ということもあって「楽天銀行」を利用しています。個人では「ソニー銀行」も利用していますが、楽天銀行にちょっとまとまった金額を入れておいて、普段の支払いは楽天銀行から、ということが多いですね。私の会社の会計担当者もアクセスできるので、社会保険などについては「楽天銀行口座から引き出して払っておいてください」と会計担当者に任せています。信頼している人物ですが、入出金のたびにメールが来るので、互いにそのタイミングで確認できるのが良いところです。
コンビニでの買い物は、小銭を作りたいときは現金、そうでないときはクレジットカードで支払います。ただし、サークルKではAMEX(アメリカン・エキスプレス)が使えないのが残念。会社関連の支払いや仕入れなどはすべてAMEXの法人カードにしているので、これはちょっと不便です。
次に、請求書などの郵送に不可欠な切手やレターパック。これも、コンビニで売っています。アパートの近くには郵便局もあるのですが、朝は9時過ぎないと開きませんし、夜はやっていません。コンビニなら24時間、いつでも切手が買えます。印紙も買えます。特にレターパックを売っているサークルKは重宝します。
それと水道やガス、電話等の公共料金、税金などもコンビニで支払います。前回触れたガス会社の払込用紙は、コンビニ専用で郵便局では払えないものだったりします。とにかく、月末は払込用紙を何枚も持ってコンビニへ。公共料金支払いにはクレジットカードが使えないのが難点ですが……。
自動引き落とし、カード引き落としという手もあるのですが、料金をできるだけ把握したいのと、どうせコンビニには行くので、なるべく自分で払いに行くようにしています。
このように、コンビニは御殿場や裾野くらいの規模の自治体の周縁部の社会インフラ、ビジネスインフラとしてなくてはならない存在だと思います。都会とは、その存在のありがたさが違います。住民票や戸籍の証明など、コンビニは行政サービスの窓口としても機能するようになりつつありますが、1つ気になるのは、切手もレターパックも売っているのにポストがないこと。コンビニに行けばポストがある、というのは悪くないはず。日本郵便は検討してもよいのではないかと思います。
普段立ち寄る近所のコンビニは3カ所(サークルK、セブンイレブン、ファミリーマート)なんですが、実は、各店舗で最も特徴的なのは、成人向け雑誌のコーナーです。周辺にあまり人が住んでいないところにあるコンビニは、申し訳程度に1列だけなんですが、自衛隊の駐屯地のすぐ近くのコンビニはこれが5列(!)もあります。ジャンルも多様(笑)。もちろん、自衛隊だけに向けているわけではないでしょうが、売れないモノは置かないコンビニのこと、ニーズがあるのは間違いありません。
紙媒体というのは、貸し借りができる、どこへでも持って行ける、破って1ページだけポケットに入れられる、電源が不要、などなどデジタルメディアにはない特徴があります。駐屯地のように個人で自由にインターネットを利用できるとは考えにくい場所では、やはり紙媒体なんでしょうか……。
次回は、裾野、御殿場での日常の「食」について書いてみたいと思います。それでは、次回までごきげんよう。
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