これまで、田舎暮らしについていくつかの側面から書いてきましたが、今回は、住んでいる富士山麓の気候風土、ラジオ、食生活、クルマ、携帯電話などなど、「へぇー、田舎ってこうなんだ」と思ったり、都会にいた頃とは変わったなぁ、と感じたりしていることを紹介しましょう(冒頭の写真は、11月下旬のかなり雪化粧した富士山)。
朝、アパートの窓の外は濃霧。「今日も霧か……」と思いつつ、富士山麓の店までクルマで上っていくと、途中から霧が晴れて青空が広がる。見晴らしの良いところにクルマを止めて下の方を見ると、今走ってきたところ、つまり富士山と箱根のはざまの部分だけが雲で覆われている――。
今春から始めた富士山麓・御殿場での田舎暮らし、来てみないと分からないことがたくさんありました。アパートの近くの道路を歩いていると、すれ違う人が挨拶をするというのも、当たり前のようですが都会ではほとんどないことで新鮮でした。朝は、犬と散歩している人や、子供を幼稚園に連れて行く親御さんが「おはようございます」。夕方は、下校途中の小学生が知らないオジサンの私に「こんにちは」と言ってくれます。私も自分から挨拶するようにしています。
来てみて初めて分かったことと言えば、やはりこの辺りの気候風土。今年は特に夏の天候が不順だったらしいのですが、想像以上に低温・多湿でした。まだ1年経っていないので、真冬のことはこれからなのですが……。
天気が悪いので洗濯物が乾きません。気を付けていないと靴箱の靴などはすぐにカビが生えてしまいます。富士山がクリアに見える日も思った以上に少なく、見えていたのに撮影できるタイミングには曇ってしまうことも(撮れるときになるべく撮って、ここにまとめてあります)。
御殿場というところは、駿河湾からの湿った空気が富士山と箱根の間に上がってくる場所に位置しているので、霧や雲が出やすいところのようです。富士山を見ていても、御殿場方面の斜面に沿って雲が上がってくることがよくあります。店の方は晴れているのに、少し下って御殿場に向かう道は霧の中、ということもしばしばです。
店がある辺りは標高1000m近いのですが、今年の夏は気温が30℃を超えた日は3日程度しかありませんでした。これは、私が覚えているかつての札幌の夏とあまり変わりません(最近はけっこう暑いらしいのですが)。この辺りでは、夕方はかなりの頻度で霧が発生し、雨もよく降りました。避暑地として有名なところではありますが、カラッとした涼しさとはちょっと違うのですね。別荘地にお住まいの方によれば、夏は冷房はなくてもよいけれど除湿器が不可欠とのこと。
本当に寒い時期はこれからですが、11月でも夜に店を閉めて外に出ると気温は3℃ということもありました。真冬にはマイナス10℃くらいまで下がることもあるらしいので、トイレの水タンクなどを凍らせないように注意しないといけません。暖房は不可欠で、店でも11月から石油ストーブをたいています。灯油代もバカになりません。円安ですが、原油価格も下がっているからか、春先よりはほんのちょっと安くなりました。
ま、私なんかはあまり後先考えずにいきなり引っ越してしまいましたが、田舎暮らしを始めるに当たっては、丸1年くらいかけて現地の四季の状況を確認する、くらいの準備をした方が本当は良いのかもしれません。
第4回のiPadのときに書いたように、インターネットラジオはとても素晴らしいのですが、実はインターネットラジオではない普通のラジオ放送を見直しています。テレビを持っていないということもありますが、ラジオも田舎暮らしで再発見したものの1つです。とりあえず、ちょっとまともなラジオを1台買って、オーディオシステムにつないで聞いています。なお、これでようやく競馬の実況も聞けるようになりました。これまでは、オンラインで馬券は買えても、結果は後ほどWebで確認――でした。
山のことゆえ、受信できるチャンネル数が少ないのがちょっと不満ではありますが、かける音楽を自分では選べないという状況では、問答無用で知らない曲や忘れていた曲をリコメンドされるわけで、ハズレもある代わりに思わぬ出会いや発見がありますね。
例えば、2012年に亡くなった尾崎紀世彦さんの「また逢う日まで」という大ヒット曲がありますが、全然違う歌詞でまったく同じメロディーの曲が流れました。尾崎さんの前に別のタイトル、別の歌詞で別のグループが歌ったけれど鳴かず飛ばずだった、という話があることを初めて知りました(無念さは察するに余りあります)。
また、ラジオで流れた知らない曲が気に入って、そのアーティストのCDを買うようになりました。これまでは、好きなバンドやアーティストを軸に共演者などをたどっていく感じだったのですが。ジャンルや方向性の嗜好はあまり変わりませんけれど。最近は「ケブ・モ」というブルースシンガーのCDがヘビーローテーションです。
いまだにラジオというのは、リクエストをする人や「お便り」を送る人などがたくさん存在するのも良いところですね。もちろん番組側で選んでいるでしょうし、場合によってはリクエストの体裁をとっているだけなのかもしれませんが、投稿内容がとても真面目で番組の質の高さに寄与しています。
インターネットやSNSなどとはまったく異なる、オーディエンスに変な緊張を要求しないメディアなんだなと思います。また、リクエストやお便りの主の「ラジオネーム」がなかなか味わい深い。「元々退屈男」とか「ショウジ・ハリセン」など、脱力感漂う中にも考えさせるものがあって1人でウケています。
ラジオの天気予報にも発見がありました。飲食店はいわゆる“お天気商売”ですから、一応、天気予報はチェックします。Webでもチェックしますが、ラジオは別のことをしながら聞いていられます。ところが、この辺りは中部地方というくくりなので、静岡県だけではなく、三重、愛知、岐阜、福井、石川あたりの予報まで流れます。どう考えても、太平洋岸の人が日本海側の天気を知りたがっているとは思えないのですが……。ま、でも、福井は嶺北と嶺南に分かれている、とかいろいろ勉強にはなります(いつか役立つかと)。
第3回ではクルマの話をしましたが、実は、リース期間満了1年前のタイミングで乗り換えを促す提案がディーラーから出てきました。これがそこそこ良い条件だったので、クルマを“機種変更”しました。リースなので、一度に大きなお金が出ていくこともなく、携帯の機種変更とまさに同じような感覚での乗り換えです(環境負荷など考えるべきことは別途いろいろあるわけですが)。
今回は、同じメーカーのSUV(最低グレードなので安い)にしました。人生初の「SUV」「4ドアセダンではないハッチバックのクルマ」「四輪駆動のクルマ」です。田舎に引っ越していなければ、絶対に選ばなかったと思います。分かっていたことではありますが、SUVは標準サイズのタイヤが大きい(225/60 R17)ので、冬に向けてのスタッドレスタイヤ(大きいほど高い)が臨時出費です。
スポーティーなセダンよりはモッサリしていますが、乗り降りしやすく、天井が高い、視界が良い、荷物がたくさん積めるなど、田舎暮らしにはマッチした実用的で楽なクルマだと思います。全高が高いので、都会だと入れない駐車場がけっこうありますね。排気量も大きくなりましたが、低速トルクがあってあまりアクセルを踏まなくてよいので、燃費は多少良くなりました。6速マニュアルのミッションも燃費に影響しているようです(この車種ではATのほうがカタログスペック上は好燃費ですが)。
ちなみにナンバーは「富士山」ナンバー。やはり田舎暮らしは走行距離が伸びます。納車から3カ月で4000kmを突破。慣らし完了です。
携帯も機種変更しました。こちらは、田舎暮らしとは直接関係ありませんが、5年近く使った折り畳みタイプの携帯電話を、富士通製のスマホに変更。「10年以上の利用&初めてのスマホ」ということで、24回払いの端末料金は実質ゼロで済みました。
カメラの性能が格段に良くなったので、コンデジはもとより、一眼レフすら持ち歩かなくても良さそうなくらいです。今日は天気が悪いからとカメラを持たずに出たものの、上のほうでは富士山が良く見えて悶絶なんてことが普段はよくあるのですが、もう大丈夫そうですね。今回の冒頭の富士山はスマホで撮ったものです。
撮った写真は、メールやメモリカードではなくGoogle Driveにアップロードしてパソコンとシェアしています。アパートも店もWi-Fi完備なので、普段はWi-Fi接続で通信しており、LTEによるデータ通信がめったに発生しないのも、田舎で、店とアパートの往復がほとんど、という生活ならではの通信状況なのかもしれません。
よく考えると、富士山麓に住んで、ウイスキーはキリンの「富士山麓」を飲み、クルマは「富士重工」、携帯は「富士通」と、生活そのものがダジャレ化している感じもなくはないのですが……(笑)。
外食が減ったことは以前に書きました。飲みに行かなく(行けなく)なったのが主な要因と思われますが、体重がけっこう落ちました。酒の量は減ってない、というかビールの量は増えたのですが、3月に引っ越す前と比べて10kg近く体重が減りました。ズボンが緩くなったり、上着の肩が合わなくなって貧相になったりしています。もっとも、以前は90kg台だったのでまだ十分に重い。
特に意識的に鍛えているわけではないですし、移動はほとんどがクルマなのが田舎なので筋肉も落ちていると思いますが、基本的に飲食店は立ち仕事。足腰はさほど衰えてはいないはず。東京に出張したとき、1年くらい前に息を切らしていた地下鉄の階段がまったく苦も無く楽に上れるようになっていたのには、ちょっとびっくりしました。いつも標高が高いところ(店は1000m弱、アパートは500m強)に居るので、多少は高地トレーニング的な効果もあるのかもしれません(笑)。
朝や中途半端な時間に「駅そば」を食べなくなったことも間違いなく効いています。振り返ってみると、都会における駅そばというものは、私にとっては純粋にカロリーと塩分のアドオンだったようです。その便利さゆえに「次の会議の途中で腹が減ってもアレだから」などと、食べなくてもよいときにまで食べてしまうのです。先日も出張していて乗り換えの電車が超満員で乗る気になれず、ついそのホームにあった駅そばに入ってしまいました。なるほど、こういうことの積み重ねなのだなと。
やはり都会というのは、食の誘惑が多いし選択肢もたくさんあるので、つい食べ過ぎてしまいます。今も、週に1回の都内出張で2kg増えて帰ってきます。田舎の1週間で元に戻して、また翌週の出張で2kg増の繰り返し。出張のときに、懐かしいものや無性に食べたくなるものを心おきなく食べ、田舎に戻ってきたら、その「食の不便さ」で元に戻すわけです。
と、まあ、とりとめなく書いてきましたが、「ラジオを買った」「CDを買うようになった」「携帯を機種変更した」などという話は、買い物に出かける余裕や近くにお店がない生活では、実は、ネットショップと宅配便によるデリバリーがあるからこそなのです。スマホはネットで予約して、店に送ってもらいました(Webサイトはかなり難解でしたが)。ネットショップには何でもあるし、宅配便は毎日届けに来てくれます。これは本当にありがたい。田舎暮らしで一番実感したことがこれです。
都会では、まず歩いてその辺のお店などを探してみるものの、結局、適当なのがなくてネットショップを検索する、ということがよくありますが、田舎ではガソリン代もかかるし探し回る時間がもったいないので、もう最初からネットです。ほかにも、横浜に住んでいた頃から飲んでいるコーヒー豆、地ビールやワインなどのちょっと手に入りにくい銘柄の酒、食器や調理器具など、生鮮食料品以外の店で使うものはほとんどネットで調達しています。
というわけで、仕事も商売も生活も、インターネットあってこその田舎暮らしだなと感じています。むしろ、ネットがまったくないところでの生活というのは、既に今日的な意味での「田舎暮らし」の範囲にはないのではないか、とも思います(あくまで私の場合ですが)。
早いもので、今年ももう終わりが近づいています。自分でも、今年はいろいろあったな、1年間良く働いたな(店はけっこうヒマでしたが:笑)、あっという間だったな、などと思っています。皆様、7月からまずは半年間、お読みいただきましてありがとうございました。良いお年をお迎えください。それでは、次回までごきげんよう。
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