あっという間に1年が過ぎた田舎暮らし。何となくペースもつかめてきて、ちょっと余裕が出てきました。とはいえ、“休みのない1週間”が毎度どんどん過ぎていきます。食事、銀行、買い物など、田舎の不便はそれとして、何か楽しいことを探しつつの毎日です(冒頭の写真は、3月末の夕刻の富士山。夏至に向けて太陽の沈む場所が富士山に近づいていきます)。
春めいてきたと思ったら、標高1000m弱に位置する富士山麓・十里木高原では、おなじみの霧が出るようになってきた。濃霧であればクルマは通らず、人の気配もない。店をちょっと早く閉めて麓の温泉に向かう。ひとっ風呂浴びたらアパートに戻って、ちょっと前倒しで仕事を片付ける――。
去年の3月上旬に御殿場に引っ越し、3月20日に十里木高原に店をオープンして、はや1年。さすがに田舎暮らしにもかなり慣れてきましたが、それでも飲食店とWebの仕事を両方やっていると、休みはほとんどありません。日々がすごいスピードで流れていく感じがします。最近の典型的な1週間はこんな感じです。
・日曜日
11時から18時まで営業(店には9時くらいに入ります)。ヒマな時は、毎週火曜日に納品となるWebの仕事を前倒しで進めます。忙しいと汗だくなので帰りに温泉に行くこともありますが、日曜日はたいてい込んでいます。
・月曜日
意外に忙しいこともあるのが月曜日。でも、翌日が店の定休日なので、売れ残ったポテトサラダなんかをアパートに持ち帰ってビールのつまみにすることが多いですね。Webの仕事があるので、ビールはそれが終わってからですが。
・火曜日
店は定休日ですが、Webのほうのメーンの仕事の納品日。前日までにできるところは進めてはいますが、まずはこれを終わらせるのが先決という日。早く終わればクルマで温泉に行き、戻ってきてまだ風呂上りの感覚が残っているうちにビールですね。納品完了、ってことで近所に焼肉を食べに行ったり。
・水曜日
この日も店の定休日。朝イチのWebの仕事の打ち合わせのために東京都内へ。火曜の納品作業はインターネットがあればどこでもできるので、場合によっては前日にホテルに入って片付けることもあります。
それと、大事なのはメーンバンクでの入金確認と振り込みです。これ、東京出張の大きな目的の1つです。キンコーズでショップカードを印刷したり、床屋に行ったりするのも水曜の出張のときですね。
日帰りの場合、朝イチのアポには三島から新幹線が一番速くて確実ですが、最近では交通費と駐車料金の節約のために、御殿場からの高速バスを使うことも増えました。多少の渋滞は覚悟で早めに出ます。前にも書きましたが、新幹線は片道4000円で駐車料金が1日1000円。高速バスは往復2980円で駐車料金は48時間まではかかりません。毎週のことなのでやはり……(笑)。
午前と午後のクライアントでのミーティングが終わったら、御殿場まで戻ってきて地元のスーパーで明日以降の営業に備えた買い出しです。三島にクルマを止めて新幹線で行くと三島に戻って来ざるを得ないわけで、御殿場までさらに移動しなければならず、その点でもちょっと面倒ではあります。
買い出しについては、普段よく行くスーパーが夜22時まで、業務用スーパーは朝8時から、いざとなったら24時間営業のスーパーもコンビニもある、といったことがこの1年で分かったので、さすがにあまり慌てなくなりました。
・木曜日
休み明けの朝はちょっと早めに店に入り、スープやトマトソースなどの仕込みです。木曜日はたいていヒマなので、土日に備えてミートソースなんかを仕込んだりもします。
木曜朝は、朝10時からのNHK FM「ザ・ソウルミュージック」が楽しみです。木曜は夕方に温泉に行くことも多いですが、この日はよく行くヘルシーパーク裾野「美人の湯」がお休みなので、アパートから歩いても行ける御胎内(おたいない)温泉に行くことも。歩いて行くと風呂上りにビールが飲めます。
・金曜日
木曜日に仕込んだものがあるので、開店準備は比較的楽なのが金曜日。朝10時からのNHK FM「セッション2015」(ジャズのライブを1時間)が楽しみです。16時まで店を営業したら、そこから夜まではWebの仕事を片付けます。金曜にやっておかなくてはならないことがけっこうあるのです。この日は、全部終わらせてからビールですね。
・土曜日
朝9時からのNHK FM「世界の快適音楽セレクション」(ゴンチチのお二人の会話が絶妙。17年目に入ったそうです)を聴きながら開店準備。日曜に備えて仕込みを追加したり、ですね。土曜なので18時まで営業です――。
というような調子で1週間があっという間に過ぎていくのですが、店の周辺は夜は人の気配がないこともよく分かったので、営業時間を平日は16時まで、土日・祝日は18時までと割り切って短くしたのが時間的な余裕につながりました。
また、たまに水曜日の東京でのミーティングが急にキャンセルになったりして「完全オフの水曜日」ができることがあります。これ、うれしい半面、やりたいこと行きたいところはいろいろあるものの、何から手を付ければよいのか判断できずに、結局、ちょっとジョギングしてシャワーを浴び、明るいうちからビールを飲み始める、などということになりがちですね(笑)。世間は平日なので、メールのチェックは欠かせないのではありますが。
あとは近所を散歩する、ですね。クルマで通過するだけでは気付かない意外な発見があったりします。前回触れたバッティングセンターもその1つ。100球くらい打ってくると、かなり汗をかいてスッキリです(ジョギングよりはるかに好きです)。
実は、先日の東京出張の際に、860gの硬式用の木製バットを買いました。たまたま入った野球用品店にちょうど良い感じのがあったもので。その後は、バットを持ったまま食事に行ったり電車に乗ったりだったので、危険なオジサンに見えたかもしれませんが。
近所を歩いていたら昔ながらのお店を見つけました。灯油などの燃料から雪かき道具、酒、たばこ、食料品、洗剤、文房具、尿漏れパンツなどまで、何でもある(けれど欲しいものはあまりない)田舎ならではのお店です。
その店の酒コーナーに「雲海の富士」という見慣れないウイスキーがありました。このウイスキー、御殿場の酒屋さんの組合がキリンの富士御殿場蒸留所に発注したプライベートブランドのウイスキーなのだそうです。富士御殿場蒸留所のモルトだけを合わせたピュアモルトウイスキーですね。
店頭で2000円ちょっとなんですが、数が限られているせいかネットでは4000円を超えていました。2000円なら「真面目に普通に作ったら、ま、少なくともこんな感じでしょう」的なベーシックで悪くないウイスキーですが、これで4000円はちょっとないなと思います。
この辺では、ブレンデッドウイスキーの、これもキリン富士御殿場蒸留所で造っている「富士山麓」が1000円くらいでどこでも買えます。都会では1000円ちょっとで買えるホワイトホース・ファインオールドもバランタイン・ファイネストも、田舎ではあまり見かけないので、おそらくウイスキーでは富士山麓が一番のお値打ちですね。
実は先日、これから出版予定の富士山麓山歩きのガイドブックを編集している方が取材にいらっしゃいました。取材する側にいたことはありますが、取材されたのは初めてです。
初対面の方に取材されると、どうしてここにお店をとか、料理はどこで身に付けたのかといった、お決まりの質問がいろいろとあるわけですが、話が長くなってもアレなので「JAGZYのこの連載を読んでください。全部書いてあります」と大変便利なのでありました。
普段は、お客様にお出ししている料理の写真を撮ることはないのですが(というかそんなことをしている場合ではないので)、日替わりパスタの写真を撮影するということでしたので、これ幸いと私も便乗してスマホで撮影しました。
この日は、ナスとズッキーニのトマトソース。ミートソースもありましたが、ま、茶色よりは赤いほうが誌面で映えるかな、と思いこちらでお願いしました。おいしそうに撮れたので、早速、店のブログにも掲載。書籍ではどういう形での紹介になるのか分かりませんけれど、店がメディアで紹介されるのは初めてなのと地元についてのガイドブックということで、ちょっと期待しています。
というわけで、試行錯誤の期間も終わって定常運転モードに入った感のある田舎暮らしなのですが、今回をもっていったんの締めとさせていただきます。オジサンの気まぐれで始めた田舎暮らしの何てことはない日常にお付き合いいただきまして、本当にありがとうございました。また、このコラムをお読みになって店にわざわざいらしていただいた皆様には、心より御礼申し上げます。それでは、皆様、いつかまたお目にかかる日まで、ごきげんよう。
田舎暮らしも1年以上経過。いやいや、まったくもって早いもんです。最近の食事は、店で自分で作って食べる「まかない」と、近所の限られた選択肢の中から。さすがに飽きもあって、結果、「まかない、ときどき焼き肉」。これで、次の東京出張までの1週間を過ごしています(冒頭の写真は、春を告げる「野焼き」の翌朝の富士山)。
夜、寝しなにウイスキーをちびちびとなめながら考えることは「さて、明日の晩飯は何にするかねぇ……。まかないがパスタだから麺類は避けたいものだ」などと食べることに終始する。ま、明日の朝の気分にもよるだろう、と早めに布団に潜り込む――。
3月も下旬になって、富士山麓も春めいてきました。29日には、春を告げる恒例の「野焼き」が自衛隊の東富士演習場で行われました。冒頭の写真は、野焼きの翌日の朝に撮影したものです。黒っぽいところが焼けた跡です。
野焼きは、Wikipediaによれば「地元の地権者団体は演習場内の害虫駆除、野火の防止、山野草の生育促進のために野焼きを行っている」ということだそうです。かなり広範囲に焼きます。2010年には火に囲まれて死者も出たそうです。
これを書いている3月末、東京は今が桜真っ盛りですが、当店の桜は標高が高いこともあって、4月下旬に満開の予定です(去年通りとすれば)。この地方特有の小さな花の桜で「フジマメザクラ」といいます。同時期にツツジも咲いて、店の周りがとてもにぎやかになります(下の写真は去年の桜です)。
ちょっと調べてみると、富士山周辺や伊豆・箱根のあたりには、「フォッサマグナ要素の植物」という、この辺に独特な植物が何種類か存在しているそうで、このフジマメザクラもその1つです。
以前、近所は外食の選択肢が少ないということを書きましたが、田舎暮らしも1年以上経過した最近では(いやいや、まったくもって早いもんです。おかげ様でつい先日は開店1周年でした)、さらに「飽き」という要素も加わり、なかなかに困った状況なのであります(苦笑)。
普段は、朝食はほぼ抜くようになって1日2食。下手すりゃ昼を食べ損ねて1日1食、なんてこともたまにあります。食事は、店で自分で作って食べる「まかない」と、近所の限られた選択肢の中でも1年経過してさらに絞り込まれたもの(主に焼肉)が中心ですね(笑)。
これに、コンビニやスーパーで総菜を2、3品買ってきてはアパートで酒を飲むというのが混じり、さらに月に1回か2回程度、アパートから徒歩30分(!)のところに見つけたなかなかうまい居酒屋まで意を決して歩いて行く、くらいの日常です。ま、チーズと生ハム、バゲットでワイン1本、なんて晩飯もありますが。
要するに、基本的には「まかない、ときどき焼き肉」で、次の東京出張までの1週間を過ごしています。そんな訳で、東京での食事は本当に楽しみですね。
まかないは、店で出すものを適当にアレンジしたり、売れ残ったものを流用したり。焼き肉は、主に「肉がうまい方の店」(よく休んでいるのが玉にキズ)で食べます。肉がいまひとつな方のお店では、肉は1種類にして野菜焼きやキムチなんかで腹を膨らませています。台湾を名乗る中華料理屋も、メニューはほとんど試してみたものの、さすがに調味料が全部同じ系統の味だったりして飽きてきました(苦笑)。
過去のブログや撮りためた写真などを見返すと、ジャンクフードの摂取量が激減していることがよく分かります。確か茂木健一郎さんだったと思いますが「後ろめたいくらいでないと楽しくない」という名言があります。これ、食べるものも一緒、というか食べるものにこそ当てはまるのでありまして、夜中のラーメンとかジャンクフードとかは「後ろめたいからこそ、いっそううまい」のです。
こんな状況なので、何か物足りなさも感じつつの日常なわけで、たまに無性にラーメンが食べたくなったりしますねぇ。ま、でも、そのせいかどうか分かりませんが、酒を飲んでいる割には「形のはっきりしたものが毎朝」というありがたいお腹の状態なのであります(笑)。
店でお出ししている食事のメニューは、パスタと洋風の煮込み料理、インド風カレーなどですが、まかないはやはりその派生系が多くなります。
例えば、常に用意してあるものの1つに和牛のボロネーゼ(ミートソース)がありますが、普通にペンネなどをゆでてペンネ・ミートソース、あるいはフライパンでいためて油を吸わせたナスを加えてナスミート・スパゲッティといった具合。
さらには、ミートソースに3種類ほどのインドスパイスを加えてビシッと辛く仕上げたドライキーマカレー的なカレー風味ミートソース。これ、ご飯でも良いですし、近所に製麺所がある「すやまうどん」に掛けてもとてもおいしく食べられます。
当店はパスタ屋ですので、当然トマトソースも常備しています。まかないでは、残り野菜を入れたトマトソース・スパゲッティ、賞味期限切れのソーセージなどを使ったナポリタン的な適当なスパゲッティなど、思い付きと有り合わせの素材で作ります。
あと、まかないならではなのが、ペペロンチーノ(ニンニクと唐辛子のスパゲッティ)ですね。これ、シンプルなだけに難しいのです。いつも何かが足りない感じに仕上がります。安定しないのでメニューには出せません。ま、練習ですね(笑)。
カレーは、ルーを入れて煮込むいわゆる「日本のカレーライス」ではなくインド風なので、いろいろな材料にスパイスを合わせてカレーやカレー味のいため物を作ります。中に入れるものは、ナスやミニトマトなどの残り野菜が多いのですが、鶏団子や鶏肉、ソーセージなども入れるなど、これもトマトソースと同じようなバリエーションですね。基本的にスパイシー(辛いのが好きなのでかなり辛い)でさらっとしています。
まかないで作るようなものをお客様に出すわけではありませんが、メニューを考えるヒントにしたりオペレーション(調理手順)を試したりする意味はありますね。手前味噌ですが、いずれも有害と言われる食品添加物的な「変なもの」は入っていないこともあって、まったくもたれたりせず、夕方にはスッキリ腹が減ります(笑)。
近所の焼き肉屋では、焼くのは牛肉(ロース、カルビ、ハラミ、タン、ホルモンなど)中心ですが、鶏のもも肉、あるいは「せせり」(うまいですねぇ)、豚バラ、豚トロ、豚モツなども焼きます。ま、1回に3種類くらいですが。
ここまでは普通なのですが、御殿場ではこれに名物の「馬」が加わります。赤身の馬刺し、馬ユッケなどが普通ですが、馬レバーもたまにあります。牛と違ってレギュレーションで生食が禁じられてはいないのが馬の良いところ。
調べてみると、馬刺しってのは100%安全でもないらしいのですが、御殿場の名物であること、仕入れ元が安心できる肉屋さんであること、昔から食べていること(実はこれが一番大事。経験に裏打ちされた知恵の結果なのです)などから、食文化の1つだと思っています。
牛のレバ刺しが禁止になったので保健所方面のレギュレーションがない(初めから生で食べることは想定外なだけの)豚のレバ刺しを出しましたなんて店がありましたが、こんなのは論外なわけです。
ちょっと脱線しますが、九州の方ではサバは締めずに刺身で食べますが、これも理由があるのですね。関東など太平洋沿岸のサバと長崎などのサバでは、アニサキス(寄生虫)の種類が異なり食中毒のリスクが全く違うのだそうです(こちらに詳しいのでご興味ある方は、ご覧ください)。ま、最近の安い居酒屋なんかでは、何も考えずに平気でホッケの刺身を出してきたりするところもありますから、気を付けないといけません。ま、出す方も食う方も、無知でありチャレンジャーであり、なのですが(苦笑)。
で、肉に話を戻しますと、このように晩飯を焼き肉屋で食べる場合、結果的に牛、豚、鳥、馬といろいろな肉を一度にバランス良く(笑)食べられるのが、御殿場の良いところなのです。
馬刺しが名物だったり周辺で養鶏や畜産が盛んだったりで、御殿場には肉屋さんがたくさんあるのですが、先日、肉がうまい方の店で1人で焼き肉を食べていると、私がいつも仕入れている肉屋さんのお兄さんが配達に来たではありませんか!
「あらら、いつもどうもお世話様です」なんて互いに挨拶。「うまいと思ったら、やっぱりあそこから仕入れてましたか!?」「あんたのとこもあそこの肉なのかい?」なんて焼き肉屋の女将さんとも。田舎は世間が狭いのですね(笑)。
肉と言えば、あとは羊があればほぼ完璧ですが、これもいつも仕入れているこの肉屋さんに素晴らしい「ラムロール」があるので、たまに「ちょっと厚切りで」と買ってきてはフライパンで焼いて、北海道では有名な「ベル」のジンギスカンのタレ(ネットで購入)に付けて食べています。懐かしい味で「ジンギスカンこそが、私のソウルフードである」といつも思います。
さて、話は変わりますが、先日近所を散歩していてバッティングセンターを発見しました。これはうれしいと、走って行ったら、緑のネットが全部降りていてまったく営業している気配がありません。「何だ廃業か……」と落胆していたのですが、別の日にたまたま晩飯を食いに外に出たら、かすかにバットにボールの当たる音が聞こえるではないですか!
急きょ食事は後回しにして、またまた走って行ってみたところ、ネットが張られライトがついていて、3人くらい打席に入っています。どうやら前回は、雪のため休業していただけだったようです。
料金もシステムもまったく案内がないのも気にせず(どうせ1回200円か300円です)、1000円札を両替機で100円玉に崩し、適当なバットを選んで勇んでケージに入りました。
しかし、料金箱に100円玉を入れてみますが動きません。しまった、専用のコインを買うのだったか? 100円取られたか? と思いつつ、もう1枚入れてみるとピッチングマシンが動き始めました。1回200円だったのですね。どこにも書いていないのですが……。
とりあえず、数年ぶりの打撃なので、時速90kmくらいを選んでいざ「来た球を打つ!」(いわゆるナガシマの打撃の「極意」です:笑)のですが、ぜんぜんタイミングが取れません。10球くらい経過してようやく、何とか来た球にバットが当たるようになりました。
実は、30代から45歳くらいまで、草野球チームに所属していました。千葉の某所の2リーグ制のローカルリーグで、ほぼ毎週の試合には首都高で横浜から千葉まで通っていました。所属のリーグではシーズン全勝でリーグ優勝、もう1つのリーグの優勝チームとの「日本シリーズ」も勝って、シーズンを通して無敗の完全優勝なんてこともありました。
スターティングメンバーで最年長になってしまったなどもあって、残念なことに自分の会社を作ってからは(今年で10年目に入りました)チームから遠ざかってしまいました。
以前住んでいた横浜のマンションも、近くにバッティングセンターがあったのと、最寄りの駅にさっぽろラーメンの店があったのが決め手になって、そこに決めたようなものでした。でも、いまやバッティングセンターは老人向けの介護付きマンションに、ラーメン屋は今はやりの魚だしの店に替わってしまいました。時は流れますねぇ……(笑)。
そういうわけで、しばらく離れていたバッティングセンターのある暮らしが戻ってきたのがとてもうれしい、田舎暮らし2年目に突入のオジサン、なのであります。折しも甲子園ではセンバツが、プロ野球もレギュラーシーズンが開幕しました。いやー、球春ですね。硬式用(軟式用だとすぐ折れてしまう)の木のバットでも買いますか? 去年は引っ越しや開店で大忙しだったので、こんな余裕はありませんでした。それでは、次回までごきげんよう。
田舎暮らしには不便なこともありますが、日常的に自然を感じられるのはやはり良いものです。朝焼けや夕焼け、それらに染まる富士山、星空、野生動物など、今回は普段の生活の中で身近に感じる自然についてご紹介します(冒頭の写真は、夏山シーズンにマイカーではここまでとなる水ヶ塚公園の駐車場から見た富士山と宝永火口。さすがに宝永火口の存在感が増す)。
夜明け前に目が覚めると窓の外が朝焼けに染まっている。キリリと寒いが、カメラを持ってはだしでベランダに出る。何枚か撮りつつしばし見とれているうちに、どんどん朝の空に変わっていく。さて、今日もメールチェックから始めるか――。
前回は雪について書きましたが、今回は最初にそのクルマに関する後日談を少し。確かに新たな愛車は車高が高いSUVの四輪駆動に最新のスタッドレスということで、雪道の走行自体には何の問題もなくて安心・安全だったのですが、意外な落とし穴がありました。実は、SUVというのはオフローダーではないのですね(当たり前ですが)。ヘビーデューティーなクルマではないわけです。
雪道走行と明け方の冷え込みで、クルマの下回りにかなりの量の氷塊が張り付いて、取れなくなってしまいました(温水の高圧洗浄でも使わない限り取れません)。これが、エンジン始動時や走行中にガラガラと盛大に“鳴る”のですね。特に、フロントサスペンションのロアアームの周りなどはひどいもので、ちゃんとステアリングが切れることを確認してから走り出さないと、というくらいでした。
もう1カ所ひどかったのは、排気管の中ほどにある触媒とシャーシの間。遮熱版が付いているのですが、遮熱しているだけに隙間に入り込んだ氷が融けなくて、しばらくの間びっしりの氷でした。少し走ると、若干融けるのですが、隙間にピッタリな形なので落ちず、融けた分だけ隙間ができてガラガラ鳴っています。
要するに、泥だの雪だのが入り込んでたまりやすく、それが落ちにくい。そういう構造というか、そんなことはほとんど想定していない普通の乗用車の造りなのでありました。
SUVってのは、普通のクルマの天井をちょっと高くして最低地上高を上げ、二回りくらい大きいタイヤにして、多少の段差などは気にしない重心の高いクルマに仕立てたもの。基本オンロードなんだけど気分だけはオフっぽいクルマ、ということでしょう。普段はとても実用的なクルマなんですが、雪が降ってちょっとその辺が見えてしまいましたね。
というわけで、今回のテーマ「自然」の話です。まず、何と言っても朝日と夕日。住んでいるアパートは国道からちょっと坂を上った東南向きの3階で、箱根の山がよく見えます。実は、これまでの人生で最も見晴らしの良い部屋なのです(苦笑)。引っ越す直前に住んでいた横浜・関内では、飲食店街の中のマンションの3階でした。窓の外には向かいのバーが見えていました。その前に住んでいたところは、隣のマンションしか見えない2階でした。この「見晴らし」ってものは、まったく田舎ならではですね。
朝は、トイレだのなんだので早い時間に目が覚めてしまいますので、天気が良ければ素晴らしい朝焼けが見られます。3階だしオジサンだしということで、カーテンを閉めずに空の様子が分かるようにしています。
朝は、雲や大気の状態で色や模様が様々。これは見ていて本当に飽きないですねぇ……。都会で働いていると、ビルの窓から夕日を見ることはけっこうありますが、朝日はなかなか見られません(住宅事情もさることながら、早起きではなかったからかもですが)。
こんな朝焼けのときは、ベランダの反対側に位置する玄関ドアを開けると、富士山が朝焼けに染まった姿が見えます。これも素晴らしい眺めです(手前の電線がいまひとつなんですが)。特に冬は、雪がピンク色に染まって本当にキレイですね。
などと朝焼けの話を書いているのは2月下旬の某日の朝なのですが、今朝は久しぶりの濃霧。隣の家の屋根がかすんでいるくらいので霧です。クリアにさえ渡った冬の空気からちょっと湿った春の空気に変わったことを感じさせられます。
朝日とともに、夕日も田舎ならでは、富士山麓ならではです。自分の店の辺りからだと富士山、特に山頂付近の冠雪したところが赤く染まる様子がキレイです。これをいわゆる「赤富士」だと思っていたのですが、ちょっと待てよと調べてみたら、やはり間違いだったのですね(日本語は難しいものです。何となく勘で間違っていそうだな、と思ったのでした)。
Webで検索してみると「主に晩夏から初秋にかけて、早朝に富士山が朝日に染まって起こる現象。青い富士山が朱色に染まることが語源」(ウィキペディアから引用)ということで、本物の赤富士はまだ見たことがないと思われます。これは、今年の宿題の1つにしておきましょう。
夕方、御殿場のアパートの方に降りてくると富士山を見る方向が東に寄ります。富士山が夕日を遮るような位置関係になるので、山肌はあまり赤くなりません。ちょっと南の方には、富士山と駿河湾の間にある愛鷹山と越前岳が夕焼け空をバックに浮かび上がっています。これらの山々を障害物なしで一望できる場所というのは、ありそうでなかなかないのですが、クルマでいろいろ走り回って探しています。
平日、天気が良いけれど、もうお客さんは来そうにない、今まさに夕日の見ごろ、ってなときに店を早仕舞いして、今日はここだ、という場所に夕日を見に行くわけですね(雇われ店長ではないのでOKなのです:笑)。
星がよく見えるのも田舎ならでは、です。今は冬ですから、晴れた夜空を見上げるとオリオン座を中心とした冬の豪華な星空です。それに加えて太陽系の惑星もなかなかないくらいのそろい踏み、といった状態です。
1月の中旬の夕方には、普段は地平線すれすれで特に都会ではなかなか見えない水星が、金星(宵の明星。ひときわ明るい)のすぐ近くに見えていました。少し上には火星も。これが2月20日くらいになると、夕方の西の空では水星が見えなくなって、金星と火星が接近していました。日が暮れてしばらくすると木星や土星も見えています。都会でも金星、木星あたりは肉眼で楽勝で見えるのですが、火星、ましてや水星となるとなかなか肉眼では確認できません。
プレアデス(すばる)をはじめとした星団を7~8倍くらいの双眼鏡で見るのも楽しいですね。実は競馬も好きなので、まともな双眼鏡はいろいろな意味で大事です(笑)。今愛用しているのは、口径43mm/倍率8倍の防水タイプの双眼鏡です。天体観測には本当は口径50mm/倍率7倍が一番良いと思いますが、諸般の事情で……(笑)。
ま、しかし、最近のデジタルカメラは大したもんですねぇ。感度をISO1600くらいにしておけば、三脚だけの星の固定撮影でかなりのところまで写ります。中学生の頃から星が好きで、モノクロの高感度フィルムで工夫していたりしたのですが、その頃とはもう隔世の感なのであります。
下の写真は、1月中旬の日没直後の西の空。これは手持ちで撮りました。ブレたのもありましたが、そこそこ撮れるもんですねぇ……。水星、金星、火星が見えています。西の空がここまで開けている場所を探すのに苦労しました(探しているうちにどんどん沈んでいきますし)。ここまで地平線に近いところまでスッキリ見えるのは、田舎の冬の澄んだ空気ならではですね。
動物なんてのも、田舎ならではです。店の周辺には、野生のシカが多数生息しているのですが、こいつらがまたずうずうしいというか、ふてぶてしいというか何というか……。一度、店が休みの日にちょっと用があって立ち寄りに行ったら、けっこう大きなオスのシカが店の庭先に入り込んで、我が物顔でその辺の植物を食べていました。
クルマを降りて近づいていくとさすがに道路の方に出ていきましたが、それでもクルマが通っても恐れることもなく、相変わらず路側帯で何か食べていました。その後、向かいのペンションの花壇を標的に道路の反対側に渡って行きましたが。
店からちょっと下ったところに「富士山資料館」という施設があって、その周りが一面のそば畑になっているのですが、そこで夜に群れを成していることも多々あります。クルマをまったく恐れない(というか無視)しているので、大変危険です。近所の別荘の方々も、せっかく庭で育てた植物を全部食われたり、ということがしょっちゅうのようです。
そういえば去年の春、店をオープンした頃には別荘地にクマが出没していました(遭遇したわけではありません:笑)。別荘の中で居心地の良い縁の下に居着いてしまったらしく、麻酔を打って山に戻してもまた戻ってくる、という状況だったようです。今年も、そろそろ冬眠から覚めて戻ってくるのでしょうか?
こんな感じで、日常の生活の中で、いつどんな“自然”に遭遇するか分からないのが田舎暮らしの楽しいところ。外出の際には、スマホもあるとはいえ(富士山を傾けずに撮るために水平を確認できるカメラアプリをインストールしています)、やはりちゃんとしたデジタル一眼レフカメラを常時携行するのが基本です。一眼レフというのは、あらゆる方向に出っ張っていてかさばって重いのが難点ですが、クルマで移動しているのが救いです。
というわけで、富士山麓で日常的に接することのできる自然の一端をご紹介しました。それでは次回まで、ごきげんよう。
昨年12月中旬にクルマのタイヤをスタッドレスに換装したもののなかなか雪が降りませんでしたが、ようやく1月30日に今シーズン初めての本格的な雪になりました。今回は、雪やスタッドレスタイヤのこと、運動不足解消のためのジョギングなど、田舎の冬の様子を少し(冒頭写真の富士山は1月31日の夕刻、夕日に染まったところ)。
馬刺しをさかなにかん酒を飲んでいたら、「明日雪だってよ……」と店の女将さんが参ったねという顔で話し掛けてきた。スマホの天気予報アプリで確認すると、どうやら翌朝は今シーズン初の本格的な雪のようだ――。
というわけで、ようやく雪が降りました。1月30日の未明から、御殿場はけっこうな雪。これまではちらつくことはあっても、ここまで積もることはありませんでした。前夜、ちょっと気にはなったのですが、雪が降るってことはそんなに気温は下がらんだろうと思い、ワイパーは立てておきませんでした。朝の気温は2℃くらいで、雪は「濡れ雪」。やはり、ワイパーが凍り付くほどではありませんでした。
この日はちょうど午後イチのアポで東京出張だったので、朝のうちに雪降る中をクルマで東名御殿場インター前まで行き、この程度の雪はものともしない高速バスで東京へ。意外なオンタイムで、高速バスに感心するとともに、こちらもインター前までの道中でスタッドレスに大枚はたいたかいがあったな、と。
そうはいうものの、本当にスタッドレスが必要ときは、シーズンに何回あるのでしょうか? 基本的には濡れ雪、路面はシャーベット状で凍結はまずしないようです。また、店の周りが大雪なら、お客さんも来られないわけで(道路が通行止めになってしまいますし)、そういうときは無理して動かなくても良いわけですね。ノーマルタイヤはオールシーズン仕様でもあるので、スタッドレスは万一のための「安心料」ってところでしょうか。
去年の2月には、70cmくらい積もって大変だった記憶もありますが、そんな雪は30年ぶりだとか。普通は積もったとしても30cmくらいらしいのですね。実際、1月30日の夜に日帰りで雨の東京から戻ってくると、御殿場も雪から雨に変わっていました。既に道路の雪はすっかり消え、翌日になると日陰以外はほとんど解けてしまいました。前回、東京あたりで考えるよりはるかに穏やかな冬、と書きましたが、まったくその通りなのでありました。
昨年12月中頃にスタッドレスに換装したのですが、SUVのタイヤは無駄にデカくて、標準サイズの夏タイヤでもバタバタしていてバネ下が重い感じでした。基本的に最近のクルマのタイヤサイズは、(制限速度に変更はないのに)太すぎ、扁平(へんぺい)すぎだと思いますね。自動車メーカーとタイヤメーカーの思惑を強く感じます(笑)。
そこで、スタッドレスでは標準の225/60/17から、215/70/16にインチダウンしてみました。タイヤが大きいだけにけっこうな金額になるので、インチダウンにはコストダウンの狙いもあります(それでもホイール、工賃込みで約12万円!)。インチダウンしたとはいえ、耐えられる負荷を示すロードインデックスは、標準サイズが99でスタッドレスが100とクリア。外径寸法はほぼ同じです。
結果、インチダウンして正解。ばね下が軽くなってバタバタしなくなりました。段差も「バッタン」ではなく、「ダンッ」くらいで軽く越えるようになりました。
このサイズが思ったよりかなり快適なので、お金のかかる話ではあるものの、春に履き替える夏タイヤも標準サイズは放置してインチダウンしたくなってきたのでした。明らかにインチダウンしたほうが、ハンドリングや乗り味が自分には好ましいのです。夏も冬も余計に1セットずつ買わせるというのも、自動車メーカーとタイヤメーカーの思惑なんでしょうか?(苦笑)
とはいえ、やはり四輪駆動と最新のスタッドレスの組み合わせは、雪が降ってもとても楽です。雪の上だろうが上り坂だろうが、ハンドルを切ったまま発進してもあっけなく前に出るし、凹凸があっても何の問題もありません。これがクルマがFRなんかだと、ハンドルを切っていたらまず出られませんし、FFでも片輪が凹凸に引っかかっていると出られなかったりします。
あとはトラクションコントロールだのアンチロックブレーキだの、昔はなかった“余計”なものが付いているので、万一のときの挙動がよく分からないのが気掛かりと言えば気掛かり。滑ってしまってから対応するのと、滑ることを前提に運転しているのでは雲泥の差です。トラクションコントロールはオフにできますが、アンチロックブレーキはオフにできません。クラッチ踏んでサイドブレーキ引いたらどうなるか(多分、後輪がロックするとは思いますが)など、ちょっと広いところで試してみなくては。
店のある十里木高原は、標高が1000m近くで気温が下がるため、念のために水道は元栓を閉めて水抜きをして帰りしますが、標高が500mちょっとのアパートのあたりではそんな心配は必要ありません。
アパートから店に向かう道路は、けっこうなワインディングですが、店に向かう時間や帰る時には、気温は氷点下ではないですし、いつも融雪剤がまかれていることもあって、凍ってツルツルになっているようなことはまずありません。
下の写真のような感じで、ある区間を担当する散布車がその区間を往復して融雪剤をまいています。このときは信号待ちをしていたら、融雪剤散布車が交差点内でUターンして鼻先に割り込んできました。その後、数kmにわたって「オレに向かってまいてんじゃねぇか!?」ってくらいの勢いで、こっちは塩だらけに。
クルマはサビそうですがスリップ事故は減るわけで、良いんだか悪いんだか、という感じではありますねぇ……。
ま、最近のクルマはサビにくくなりましたし、毎日のことなのでことさら洗ったりはしません。リース車両である、ということもあってあまり気にならないのですね。
このようにクルマで動くのが田舎暮らしなわけですが、前回触れたように、近所を歩いてみて「これはなかなか良いジョギングコースだな」と思えるルートがあったのと、冬は(店がヒマ、などで)さすがに運動不足だし汗をかくこともないということで、久しぶりにジョギングを再開しました。4年ぶりくらいでしょうか。
実は、正月休みのある日、思い立ってそこらへんをちょっと走ってみたら、予想以上に足腰も心肺も衰えており、30分の予定が息が切れて15分で切り上げざるを得なかったのですね。これは鍛え直さんとイカンな、ということでジョギング再開を決断したのでありました。多少は走っていた頃でもせいぜい10km1時間くらいのペースだったので、気合いの入ったランナーからすればお笑いなレベルではあるのですが。
それでも、マイペースの30分くらいをたかだか3回かそこら走っただけで、けっこう戻るもんですねぇ。アップダウンもありますが30分くらいならもう楽勝となりました(距離は5kmに満たないと思いますが)。アパートが標高530mくらいで、さらに数十m上ってそれから下ってくるので、微妙に高地トレーニングかもしれません。
ま、でも、ハーフマラソンとかフルマラソンとか、どこかの大会とか、そういう目標設定はしませんので、あしからず(笑)。ジョギング始めたらすぐに「目標はフルだね」とか「○○マラソンにでも出たらどうだ」なんて言うのは(何回も言われたことがありますが)、個人的にはかなり違うのではないかと思っております。目標設定は人それぞれでありますが、どうも日本のオジサンは何でも突き詰めてしまう、あるいは何らかのお墨付きを欲しがる、といった傾向があって、ですね……(笑)。そもそも人生は他にもやることがあるので、4時間も走ってられないと思うのです(あくまで私の場合ですが)。
この時期、さすがにTシャツだとけっこう寒く、ダウンベストだと走りにくい、あいにく適当なウエアを持っていない、という状況だったので、東京に出張した帰りにジョギング用のウインドブレーカーを買ってきました。せっかくウエアを買ったのだから、というのも続けるモチベーションの1つになりますね。
そういうわけで、店を休んでWebの仕事をする日には、早起きして午前中の仕事を終わらせてから30分のジョギング。汗だくのまま着替えを持ってクルマで近所の温泉「美人の湯」に行き、さっぱり汗を流す。その後、洗濯機を回しつつ(運動すると洗濯物が増えるのが難点です)午後の仕事に取り掛かる、というルーチンが定着しつつある田舎暮らしなのでありました。それではまた、次回まで、ごきげんよう。
皆様、遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。お正月はいかがお過ごしだったでしょうか? 当方、年末はちょっとやることがたくさんあったのですが、年が明けてからは、久しぶりの休みをのんびりと過ごしました。去年の3月に田舎暮らしを始めて最初の正月。今回は、田舎でゆるゆると1人で過ごしていて気付いたことなどです(冒頭の富士山は1月3日の午後。御殿場方面に向いたこの斜面が最も雪が下の方まで積もっています)。
午前6時を過ぎるとアパートの窓から箱根方面の朝焼けが見える。玄関のドアを開けると、隣家の向こうで富士山も朝焼けに染まっている。さて起きてメールをチェックするか、とまずはPCの電源を入れる。テレビのない生活は、正月も変わらず早寝早起きなのだ――。
去年の3月に田舎暮らしを始めて以来、約10か月。迎えた最初の正月は、久しぶりに1人でのんびりと過ごしました。ま、いわゆる正月らしいことはほとんどしないわけですが、普段はなかなか時間が取れなくてできないようなことを片付けたり、仕事をしたり。冬は晴れることが多い土地柄でもあり、3階で南東向きのアパートは日当たりが良くて暖房も不要なほど。悪くない正月でありました。
元日、まずはしばらく離れていた十里木高原にある自分の店に行って年賀状や年末にたまった郵便物などを取り込み、水回りの凍結などをチェック。その後、24時間365日営業のイオン(元日はこの辺りでは他にコンビニくらいしか営業していない)で静岡の地酒とイオンならではの安い刺身など、いくつかのツマミを買い込んでアパートに戻りました。まだ日が高いうちから、ひとりマイペースで飲んでいるうちにすぐに夕暮れに。テレビがないので、早々に酔っ払って就寝です。
2日は、ありがたいことにヘルシーパーク裾野「美人の湯」がこの日から営業なので、まずはクルマでひとっ風呂浴びに。気温が低い中、富士山の見える露天風呂の湯にアゴまで浸かっていると、のぼせることもなくいつまでも入っていられるのでした。露天風呂の脇に雪でもあれば最高なんですが(笑)。
風呂上りにノンアルコール・ビールを飲みつつ、名物(とはいえ、妙に短時間でサクッと出てくる。揚げ物だけにサクッなのか?)の「愛鷹牛コロッケ」などを食べてからアパートに戻り、今年のWebの仕事がスタートです。店のほうは1月8日の木曜から再開(火曜・水曜が定休のため)ですが、Webの仕事は2日の午後が仕事始め。休養たっぷり、温泉にも入ってサッパリしてきた、ってことで、早く終わらせて本物のビールを飲みたい一心でもあり、仕事は大変にはかどりました。
翌3日は、午前中に昨夜の続きの仕事。ま、一晩寝かせるとミスが見つかったりするもんです。午後からは散歩に出掛け、近所をじっくり歩いてみました。引っ越して約10カ月、ほぼ休みなしの毎日だったので、近所の様子は「実はいまだにさっぱり」なのです。休みがなくクルマで移動するばかり、という生活ではなかなか地元のことが分からないものです。ジョギングとかすれば、またちょっと違うんでしょうけれど(昔は10kmくらいは走ったのですが、最近はすっかりご無沙汰です)。
とりあえず、すぐ目の前の「浅間神社」(せんげん、と読みます。おみくじなど初詣対応の商売は何もない素っ気なさ)にお参り。この浅間神社は富士山信仰の神社で、富士山の周りにたくさんあります。アパートの近くは結構小さな浅間神社で、そんなに人も集まらないらしく普段と違うのは鳥居に和紙を折った「紙垂」(しで)が下がっていることくらいです。
そういうわけで、ぶらぶらと歩き始めたわけですが、「アパートから徒歩数分でこんなに富士山がキレイに見えるところがあったとは!」とか「へー、このだだっ広い芝の広場は、ラジコン飛行機の愛好者が借りているスペースなんだ。部外者がラジコン飛ばしたら罰金だと書いてあるけど、金額も書いてないし法的裏付けとかどうなんでしょ?」とか「養鶏場があって結構臭いがすると思ったら立派な鶏の鎮魂碑がある」など、いろいろと発見がありました。
日が傾くまで、かなりの遠回りをしながら歩いて御殿場駅まで。3時間弱かけて汗ばむくらい歩いた後は、駅前のインド料理屋でビールです。ここも、一度入ってみたかったのですが、クルマなので駐車場を探さないといけないとか酒が飲めないとか、いや今日はカレーよりラーメンだよ、などの事情でなかなか試すことができずにいたのでした。
まずは「ポテトとチキンのスパイシーサラダ」でビールを2杯。このジャガイモと鶏肉の組み合わせってのは、小麦粉の皮でひき肉を包む(餃子とかラビオリなど)なんてのとともに、人類共通の食文化だと思いますね。あとは、干支だからというわけではありませんが、羊と玉ねぎのカレー(マトンドピアザ)を食べて、キリン「富士山麓」の水割りを1杯。かなり個人的な嗜好ですが、カレーに合う飲み物としてはウイスキーの水割りがベストだと思っています。
駅前に出たついでに、小田急バスの営業所で次の東京出張のための高速バスのチケットを購入しました(富士急バスやJRバスもありますが、今回は小田急バス)。今度の出張は、泊まりの上にアポが新宿なので、新宿周辺に宿を取って小田急バスの御殿場-新宿西口の往復割引と御殿場の駐車場無料サービスで格安に済ませようという計画です。
高速バスは、条件さえ合えば一番安いのですが、道路の渋滞状況が見えないので朝イチなどのアポがないことが利用する際の条件になりますね。それと、帰りもバスが使えるようなスケジュール調整ができる、ということでしょうか。
それにしても、往復で2980円は安い。三島-東京の新幹線は片道4000円ですから。在来線でも片道2000円くらいかかります。しかも、バスの場合は48時間までの駐車料金(2000円相当)が無料になります。JRではこのような駐車場のセット割引きも往復割引もありません。
バスには1月5日に乗ったのですが、仕事始めの平日とはいえ乗客はまばら。東名高速の片道だけで高速代を4140円払っていました。さらに首都高で1900円くらい。燃料代にドライバーの人件費などを考えると、ありがたいけれど厳しい商売だなと思いました。
高速バスに話がそれてしまいましたが、昨年、出張の話を書いた時には、まだ高速バスについてよく分かっていなかったのですね。予定がタイトな場合が多くて、渋滞を考えると端から選択肢にならない、という事情もありました。でも実際に乗ってみると、御殿場から新宿まで約90分。安いし、本数も結構あって便利です。今後は、出張の予定によってはバスを使いうことにしましょう。
というわけで1月3日はバスのチケットを買ってアパートに戻ったわけですが、御殿場駅からアパートまでは、最短距離だと歩いて多分1時間20分くらいだと思われます(クルマで20分くらいなので)。結構な距離でしかも上り一方。何だか面倒になっていたら、たまたま駅前に1時間に1本しかないバスが「今まさに発車せん」という状態で止まっていました。ま、これ幸いと乗ってしまいますよね(笑)。
このバスは市内を循環している路線で、アパートのちょっと先で折り返します。普段はクルマで動いているのでほとんど使いません。逆に、バス停などで後ろに付いてしまって「あちゃ~」なんてことがあるばかり。
シートなんかはボロボロの結構古い車両なのですが、乗ってみて驚きました。何とSuica(JR東日本)が使えるのです。JR御殿場線(JR東海)ではSuicaは使えないし、Suicaで支払えるところも周辺ではあまり見ないので、すっかりこの辺はTOICA圏なのだと思っていたのですが、これはありがたい。何でも乗ったり使ってみたりしてみるもんですね。
今年の正月は富士山が本当によく見えました。間に悪天候があったりすると雪が増えたりするのでしょうけれど、ずっと好天だったので見た感じはあまり変わらないのがぜいたくな不満ですね(笑)。頻繁に見ていると「宝永火口から噴煙かぁっ!?」なんて思える雲に遭遇したりします。
富士山は、今回の冒頭の写真のように御殿場方面へ向かう斜面が一番下まで雪があります。駿河湾に面した方はこの半分くらいでしょうか? ま、そっちのほうがいわゆる典型的な冠雪バランスの富士山という風情ではありますが……。
クルマは四駆でスタッドレス(12月半ばに換装)、と雪への備えは万全にしてあるのですが、十里木高原の店の周辺も御殿場市内もまだ備えが本領を発揮するような状態にはなっていません。早朝は氷点下なので見事な霜柱が見られたりしますけれど、昼間は最高気温が10℃とかなので、東京方面で思われているよりもかなり穏やかな冬です(1月15日までの段階)。
2日の明け方に見た今年の初夢は、競馬と料理でした。競馬は、馬券売り場で軸馬から全頭流しの馬券を買おうとしたものの、発券機の画面が分かりにくくてもたもたしていたら締め切りに間に合わず買えなかった、という内容。レース結果は、予想的中ではあれど一番人気で決着(1着2着は逆なのが笑えましたが)だったので「当たり損」(低い倍率の馬券が的中しても、手広く流してたくさん買っているので払戻金が投資額を上回らない)を回避できてよかった、というものでした。
料理の方は、手間が掛かり過ぎるメニューを開発してしまい、それを2つ同時に四苦八苦しながら作っていて、その間に競馬がどんどん進んでしまう、というもの。料理を待っているお客さんは、その間に馬券が当たっていました。何だか「人生は、競馬の比喩である」(by 寺山修司)を感じさせる、変に現実的な夢なのでありました(苦笑)。
ま、こんな感じでゆるゆると田舎暮らし2年目がスタートしました。今年も日々気付いたことなどを中心に田舎の暮らしの一端をご紹介したいと考えていますので、よろしくお願いいたします。それでは次回までごきげんよう。
これまで、田舎暮らしについていくつかの側面から書いてきましたが、今回は、住んでいる富士山麓の気候風土、ラジオ、食生活、クルマ、携帯電話などなど、「へぇー、田舎ってこうなんだ」と思ったり、都会にいた頃とは変わったなぁ、と感じたりしていることを紹介しましょう(冒頭の写真は、11月下旬のかなり雪化粧した富士山)。
朝、アパートの窓の外は濃霧。「今日も霧か……」と思いつつ、富士山麓の店までクルマで上っていくと、途中から霧が晴れて青空が広がる。見晴らしの良いところにクルマを止めて下の方を見ると、今走ってきたところ、つまり富士山と箱根のはざまの部分だけが雲で覆われている――。
今春から始めた富士山麓・御殿場での田舎暮らし、来てみないと分からないことがたくさんありました。アパートの近くの道路を歩いていると、すれ違う人が挨拶をするというのも、当たり前のようですが都会ではほとんどないことで新鮮でした。朝は、犬と散歩している人や、子供を幼稚園に連れて行く親御さんが「おはようございます」。夕方は、下校途中の小学生が知らないオジサンの私に「こんにちは」と言ってくれます。私も自分から挨拶するようにしています。
来てみて初めて分かったことと言えば、やはりこの辺りの気候風土。今年は特に夏の天候が不順だったらしいのですが、想像以上に低温・多湿でした。まだ1年経っていないので、真冬のことはこれからなのですが……。
天気が悪いので洗濯物が乾きません。気を付けていないと靴箱の靴などはすぐにカビが生えてしまいます。富士山がクリアに見える日も思った以上に少なく、見えていたのに撮影できるタイミングには曇ってしまうことも(撮れるときになるべく撮って、ここにまとめてあります)。
御殿場というところは、駿河湾からの湿った空気が富士山と箱根の間に上がってくる場所に位置しているので、霧や雲が出やすいところのようです。富士山を見ていても、御殿場方面の斜面に沿って雲が上がってくることがよくあります。店の方は晴れているのに、少し下って御殿場に向かう道は霧の中、ということもしばしばです。
店がある辺りは標高1000m近いのですが、今年の夏は気温が30℃を超えた日は3日程度しかありませんでした。これは、私が覚えているかつての札幌の夏とあまり変わりません(最近はけっこう暑いらしいのですが)。この辺りでは、夕方はかなりの頻度で霧が発生し、雨もよく降りました。避暑地として有名なところではありますが、カラッとした涼しさとはちょっと違うのですね。別荘地にお住まいの方によれば、夏は冷房はなくてもよいけれど除湿器が不可欠とのこと。
本当に寒い時期はこれからですが、11月でも夜に店を閉めて外に出ると気温は3℃ということもありました。真冬にはマイナス10℃くらいまで下がることもあるらしいので、トイレの水タンクなどを凍らせないように注意しないといけません。暖房は不可欠で、店でも11月から石油ストーブをたいています。灯油代もバカになりません。円安ですが、原油価格も下がっているからか、春先よりはほんのちょっと安くなりました。
ま、私なんかはあまり後先考えずにいきなり引っ越してしまいましたが、田舎暮らしを始めるに当たっては、丸1年くらいかけて現地の四季の状況を確認する、くらいの準備をした方が本当は良いのかもしれません。
第4回のiPadのときに書いたように、インターネットラジオはとても素晴らしいのですが、実はインターネットラジオではない普通のラジオ放送を見直しています。テレビを持っていないということもありますが、ラジオも田舎暮らしで再発見したものの1つです。とりあえず、ちょっとまともなラジオを1台買って、オーディオシステムにつないで聞いています。なお、これでようやく競馬の実況も聞けるようになりました。これまでは、オンラインで馬券は買えても、結果は後ほどWebで確認――でした。
山のことゆえ、受信できるチャンネル数が少ないのがちょっと不満ではありますが、かける音楽を自分では選べないという状況では、問答無用で知らない曲や忘れていた曲をリコメンドされるわけで、ハズレもある代わりに思わぬ出会いや発見がありますね。
例えば、2012年に亡くなった尾崎紀世彦さんの「また逢う日まで」という大ヒット曲がありますが、全然違う歌詞でまったく同じメロディーの曲が流れました。尾崎さんの前に別のタイトル、別の歌詞で別のグループが歌ったけれど鳴かず飛ばずだった、という話があることを初めて知りました(無念さは察するに余りあります)。
また、ラジオで流れた知らない曲が気に入って、そのアーティストのCDを買うようになりました。これまでは、好きなバンドやアーティストを軸に共演者などをたどっていく感じだったのですが。ジャンルや方向性の嗜好はあまり変わりませんけれど。最近は「ケブ・モ」というブルースシンガーのCDがヘビーローテーションです。
いまだにラジオというのは、リクエストをする人や「お便り」を送る人などがたくさん存在するのも良いところですね。もちろん番組側で選んでいるでしょうし、場合によってはリクエストの体裁をとっているだけなのかもしれませんが、投稿内容がとても真面目で番組の質の高さに寄与しています。
インターネットやSNSなどとはまったく異なる、オーディエンスに変な緊張を要求しないメディアなんだなと思います。また、リクエストやお便りの主の「ラジオネーム」がなかなか味わい深い。「元々退屈男」とか「ショウジ・ハリセン」など、脱力感漂う中にも考えさせるものがあって1人でウケています。
ラジオの天気予報にも発見がありました。飲食店はいわゆる“お天気商売”ですから、一応、天気予報はチェックします。Webでもチェックしますが、ラジオは別のことをしながら聞いていられます。ところが、この辺りは中部地方というくくりなので、静岡県だけではなく、三重、愛知、岐阜、福井、石川あたりの予報まで流れます。どう考えても、太平洋岸の人が日本海側の天気を知りたがっているとは思えないのですが……。ま、でも、福井は嶺北と嶺南に分かれている、とかいろいろ勉強にはなります(いつか役立つかと)。
第3回ではクルマの話をしましたが、実は、リース期間満了1年前のタイミングで乗り換えを促す提案がディーラーから出てきました。これがそこそこ良い条件だったので、クルマを“機種変更”しました。リースなので、一度に大きなお金が出ていくこともなく、携帯の機種変更とまさに同じような感覚での乗り換えです(環境負荷など考えるべきことは別途いろいろあるわけですが)。
今回は、同じメーカーのSUV(最低グレードなので安い)にしました。人生初の「SUV」「4ドアセダンではないハッチバックのクルマ」「四輪駆動のクルマ」です。田舎に引っ越していなければ、絶対に選ばなかったと思います。分かっていたことではありますが、SUVは標準サイズのタイヤが大きい(225/60 R17)ので、冬に向けてのスタッドレスタイヤ(大きいほど高い)が臨時出費です。
スポーティーなセダンよりはモッサリしていますが、乗り降りしやすく、天井が高い、視界が良い、荷物がたくさん積めるなど、田舎暮らしにはマッチした実用的で楽なクルマだと思います。全高が高いので、都会だと入れない駐車場がけっこうありますね。排気量も大きくなりましたが、低速トルクがあってあまりアクセルを踏まなくてよいので、燃費は多少良くなりました。6速マニュアルのミッションも燃費に影響しているようです(この車種ではATのほうがカタログスペック上は好燃費ですが)。
ちなみにナンバーは「富士山」ナンバー。やはり田舎暮らしは走行距離が伸びます。納車から3カ月で4000kmを突破。慣らし完了です。
携帯も機種変更しました。こちらは、田舎暮らしとは直接関係ありませんが、5年近く使った折り畳みタイプの携帯電話を、富士通製のスマホに変更。「10年以上の利用&初めてのスマホ」ということで、24回払いの端末料金は実質ゼロで済みました。
カメラの性能が格段に良くなったので、コンデジはもとより、一眼レフすら持ち歩かなくても良さそうなくらいです。今日は天気が悪いからとカメラを持たずに出たものの、上のほうでは富士山が良く見えて悶絶なんてことが普段はよくあるのですが、もう大丈夫そうですね。今回の冒頭の富士山はスマホで撮ったものです。
撮った写真は、メールやメモリカードではなくGoogle Driveにアップロードしてパソコンとシェアしています。アパートも店もWi-Fi完備なので、普段はWi-Fi接続で通信しており、LTEによるデータ通信がめったに発生しないのも、田舎で、店とアパートの往復がほとんど、という生活ならではの通信状況なのかもしれません。
よく考えると、富士山麓に住んで、ウイスキーはキリンの「富士山麓」を飲み、クルマは「富士重工」、携帯は「富士通」と、生活そのものがダジャレ化している感じもなくはないのですが……(笑)。
外食が減ったことは以前に書きました。飲みに行かなく(行けなく)なったのが主な要因と思われますが、体重がけっこう落ちました。酒の量は減ってない、というかビールの量は増えたのですが、3月に引っ越す前と比べて10kg近く体重が減りました。ズボンが緩くなったり、上着の肩が合わなくなって貧相になったりしています。もっとも、以前は90kg台だったのでまだ十分に重い。
特に意識的に鍛えているわけではないですし、移動はほとんどがクルマなのが田舎なので筋肉も落ちていると思いますが、基本的に飲食店は立ち仕事。足腰はさほど衰えてはいないはず。東京に出張したとき、1年くらい前に息を切らしていた地下鉄の階段がまったく苦も無く楽に上れるようになっていたのには、ちょっとびっくりしました。いつも標高が高いところ(店は1000m弱、アパートは500m強)に居るので、多少は高地トレーニング的な効果もあるのかもしれません(笑)。
朝や中途半端な時間に「駅そば」を食べなくなったことも間違いなく効いています。振り返ってみると、都会における駅そばというものは、私にとっては純粋にカロリーと塩分のアドオンだったようです。その便利さゆえに「次の会議の途中で腹が減ってもアレだから」などと、食べなくてもよいときにまで食べてしまうのです。先日も出張していて乗り換えの電車が超満員で乗る気になれず、ついそのホームにあった駅そばに入ってしまいました。なるほど、こういうことの積み重ねなのだなと。
やはり都会というのは、食の誘惑が多いし選択肢もたくさんあるので、つい食べ過ぎてしまいます。今も、週に1回の都内出張で2kg増えて帰ってきます。田舎の1週間で元に戻して、また翌週の出張で2kg増の繰り返し。出張のときに、懐かしいものや無性に食べたくなるものを心おきなく食べ、田舎に戻ってきたら、その「食の不便さ」で元に戻すわけです。
と、まあ、とりとめなく書いてきましたが、「ラジオを買った」「CDを買うようになった」「携帯を機種変更した」などという話は、買い物に出かける余裕や近くにお店がない生活では、実は、ネットショップと宅配便によるデリバリーがあるからこそなのです。スマホはネットで予約して、店に送ってもらいました(Webサイトはかなり難解でしたが)。ネットショップには何でもあるし、宅配便は毎日届けに来てくれます。これは本当にありがたい。田舎暮らしで一番実感したことがこれです。
都会では、まず歩いてその辺のお店などを探してみるものの、結局、適当なのがなくてネットショップを検索する、ということがよくありますが、田舎ではガソリン代もかかるし探し回る時間がもったいないので、もう最初からネットです。ほかにも、横浜に住んでいた頃から飲んでいるコーヒー豆、地ビールやワインなどのちょっと手に入りにくい銘柄の酒、食器や調理器具など、生鮮食料品以外の店で使うものはほとんどネットで調達しています。
というわけで、仕事も商売も生活も、インターネットあってこその田舎暮らしだなと感じています。むしろ、ネットがまったくないところでの生活というのは、既に今日的な意味での「田舎暮らし」の範囲にはないのではないか、とも思います(あくまで私の場合ですが)。
早いもので、今年ももう終わりが近づいています。自分でも、今年はいろいろあったな、1年間良く働いたな(店はけっこうヒマでしたが:笑)、あっという間だったな、などと思っています。皆様、7月からまずは半年間、お読みいただきましてありがとうございました。良いお年をお迎えください。それでは、次回までごきげんよう。
今回は、田舎暮らしとはちょっと離れますが、飲食店を始めるに際して、料理の方はどうやって身に付けたのか、といった話を少しさせていただこうと思います。富士山麓に開いた店では、日替わりのパスタや洋風の煮込み料理などを中心にお出ししていますが、これらの料理は基本的に我流。どこかのお店で修行した経験はありません。中学生の頃に読んだエッセイなどがベースにあります(冒頭の写真は、11月上旬のある晴れた夕方の富士山)。
朝、店に着いたらまずスープを作り始める。例えば、ご近所の方の自家製ベーコンのだしが効いたキャベツのスープ。いったん煮立ったらトロ火にして、ランチ営業開始までの時間で味をなじませる。パスタの湯を沸かし始め、その間に開店前の掃除を完了させる。ブログを更新したりするうちに開店時間だ――。
店では、日替わりのパスタや洋風の煮込み料理などを中心に、自分が食べたいと思うもの、自分がうまいと思うものをお出しています。どこかのお店で修行したなどということはなく、これらの料理は基本的に我流です。
あえて師匠を挙げるとするならば、“街の巨匠たち”でしょうか(笑)。前にも書きましたが、高級店はまず行かないものの、就職してからはほとんどすべての食事が外食だったので、いろいろなお店のやり方などを客席からだけではありますが見て、さまざまな影響を受けています。
食事を提供する側になったのと、外食が減ったのを理由に更新をやめてしまいましたが、携帯のカメラが良く写るようになってからの10年弱、食べたものをブログに残してきました。この「なんとなく『イーティングプア』」 、現在は更新していないので、広告が出るようになってしまい見ずらくて恐縮ですが。
「どんなものを食べているか言ってみたまえ。君がどんな人間か当てて見せよう」とは、フランスの食通ブリア・サバランさんの言葉ですが、ブログには何を考えているかまで書いてありますので、どんな人間なのかはバレバレだと思います(笑)。
この食べ物のブログでは、基本、お店や料理をけなすような内容は書かないことにしていました。ダメなものは無視するだけのことで(徹底的にすべてがダメってのはそうそうないですし)、それなりにどこか1つでも良いところ、あるいは面白いところを見つけてネタにするようにしていました。こういうことを長いことやっていると、例えば「吉野家の、うな丼の経年変化を見る」なんてことも検索一発で簡単にできてしまいますからとても便利です。
ブログ紹介ついでに酒のブログも。こちら「続・Webとウイスキーの日々」では、ウイスキーを中心に印象に残った酒のことを書いてきました。
依然として飲む側でもあるものの、提供する側になったのでこちらも3月以降は更新していません。また「続」というのは、10年くらい前の日経BP在職中に書いたウイスキーについての連載コラム「Webとウイスキーの日々」があるためで、こちらも日経BPとの合意の下、アーカイブして残してあります(2番目の記事から以下、先頭に1-24の番号のあるエントリーです)。
ウイスキーについては、前回、開店に際してグラスなどでお世話になったことを書いた横浜・日吉のバー「画亭瑠屋」の名バーテンダー・長谷川一美さんが師匠です。横浜に引っ越したのが1994年、その直後くらいから通い始めてかれこれ20年。酒に限らず、音楽や映画、人との会話など、たくさんのことを教えていただきました。
よく、「やっぱり居酒屋の息子だね」などとも言われますが、実家は札幌・ススキノで居酒屋をやっていたものの、店に出て手伝うようなことはありませんでした。食べるものにしても、お客さんには出せなくなった臭いホッケの開きとか、表面が七色になったマグロとか、そういった劣化した残り物を食べさせられることはあっても、日常的にはいたって普通の食卓でした。余談ですが、人生で唯一の食あたりは、父の店で残ったカニをもったいないと思って食べた結果です(笑)。
北海道の住宅には、夏以外は常に火がついている大きな石油ストーブがあります。中学生の頃、鶏ガラと豚骨をストーブの上で1昼夜煮てスープを取り、それでラーメンを作った記憶があります。「うまいなぁ……そこらのラーメン屋よりはるかにうまい。でも、これを毎日ってのは勘弁だ」などと考える嫌なガキでありました。カレーなんかも自分で作るのが好きでしたね。あとは、外で食べたピザのトマトソースやジンギスカンのたれなどの再現に凝ったりしていました。
中学生の頃に読んだ伊丹十三さんや荻昌弘さんのエッセイには、食べるもの、食べることについて多大な影響を受けました。今でも、自分の中で基本になっていると思います。パスタもそうですが、コーヒーなんかもまったくそうで、これらの本を読んで中学生のころに覚えた味、やり方がいまだに基本です。
北国では、ストーブでは常に湯を沸かしている(乾燥しますからね)ので、受験勉強の際にコーヒーのドリップをずいぶん研究したわけですね。中学3年にして既に、マンデリンの中深煎りをペーパーフィルターで落とす、と決めていました。今でも、一番好きな豆はマンデリンですね。また、当時買ったフィリップスの電動コーヒーミルも健在。ブラウンのひげ剃りとともに壊れないにもほどがありますね、昔のドイツ製品は。
伊丹十三さんの「ヨーロッパ退屈日記」(新潮文庫)の山口瞳さんによる解説には、「この本は、まだ世俗に染まっていない中学生くらいに読んでもらいたい」というようなことが書いてありますが、まったく同感です(笑)。
他に影響を受けたのは、写真家で料理研究家の西川治さんの「悦楽的男の食卓」(BRUTUS BOOKS)でしょうか。雑誌全盛のころのお金がかかったムックで今でも大切にしています。横浜に住んでいた頃は、この本を読んでは中華街でアヒルの丸焼きを買ってきてスープにしたり、ラムのカレーを作ったりしましたね。今でも、トマト味のイワシのスープやマグロのサラダなど、この本で知ったメニューは自分の料理のレパートリーに大きく影響しています。
もちろん、参考にしているレシピ本などもありますが、参考あるいは確認のためですね。そっくり同じものを作っても仕方ないですし、上述の何冊かの本の影響力にはまったく及ばないと思っています。
子供ができてからは、朝ご飯を食べさせて保育園に連れていくのが私の役目になりました。その後、小学校6年の時に給食室の改装で急に弁当が必要になり、高校卒業までの約7年弱、毎朝、子供に弁当を作っていました。在職中は、タイムカードのない職場、インターネットでほとんどのことができる部署、といったことが本当にありがたいと思いました。
朝ご飯や弁当作りで一番つらいのは、二日酔いですね。立っているのもキツい、味見すると吐きそうになるなど、何度もありましたが(苦笑)。
朝は、短時間で何品か作るわけで、シリアルに作っていたら時間ばかりかかります。電子レンジ、オーブントースター、魚焼き用のガスグリル、フライパンなどを使って、放っておいて完成するものと火の前に張り付いて作るもの、すべての出来上がりのタイミングがそろうようにパラレルに進行させるわけですね。あと、弁当のおかずは、ある程度冷まして詰めないといけません。
弁当についても、ネタ切れ防止と重複防止のため、またせんえつながら弁当作りをされている方々の参考になればと考えてブログ「20分でお弁当」を書いていました(笑)。さすがにキャラ弁だけは作りませんでしたが……。
こういう感じで、少ない量の調理には慣れていたのですが、前回も触れたサマーキャンプで「量」のインパクトというものを知りました。50人前とはどういうことか、というのを身体で覚えた、といいますか。それともう1つ、キャンプに来てくれた福島の子供たちが、残さず食べてくれたことがとても励みになりました。
例えば献立がカレーライスの晩、ご飯の量は3升炊きの釜で1回炊くだけでは足りなくて、もう3升炊く。スパゲッティの場合は、寸胴鍋2本で合計5kgゆでる。味噌汁やスープは寸胴鍋1本に8割がたの量を作る。これ、かなり重いので食事の場所まで持っていくのが一苦労。といった量や材料などについての数々の感覚やノウハウです。
当然ながら、1人では全部に手が回りませんので、何をどう分担するか、どこがボトルネックになるから何をどういう順番で進めるか、といった段取りの点でも相当鍛えられました。
そんなキャンプでの経験が生きたのが、今年の8月末、富士山麓を一周するマラソンのイベントからいただいた食事の注文でした。オーダーはマーボー豆腐100人前(笑)。挽き肉4kg、豆腐40丁、ネギ20本などなど、普通は肉や豆腐の量からして、ちょっと見当がつかないと思います。食材は、いきなり買いに行ってもない可能性が高いので、近所のスーパーに事前に予約。前夜に受け取りに行きました。
量が多いときは、一遍に作ると、失敗したらリカバリーが効きません。また、マーボー豆腐の場合、豆腐が細かく崩れてしまっておいしくありません。とういうわけで、中華鍋の容量も勘案して10人前ずつ10回に分けて作ることにしました。こうすれば、味のバラつきがあったとしても、修正が効きます。また、辛口と中辛などを作り分けることも容易です。
この時は、さすがに1人では時間がかかりすぎるので、キャンプで一緒に厨房を担当したボランティア仲間の大学生T君に手伝いに来てもらいました。まずは、ニンニク、ショウガ、ネギといった材料を刻むのが最も時間を要すると考え、その作業を中心に最適なオペレーションを考えてから取り掛かります。1回、2回と10人前ずつ作ってみて、回数を重ねるごとにだんだんスムーズになり、無事に辛口50人前、中辛50人前を時間内に作って納めることができました。
こうやって振り返ってみると、何だか人生に無駄なことはないもんだな、と思いますね(笑)。そういうわけで、これらのいくつかの経験や思い込みなども含めて「我流」なわけです。だから、「本格」や「正統」ではなくて、あくまで洋風の家庭料理の延長であって、最上級ではないけれど少なくとも自分が食べたいと思えるもの、おいしいと思えるものをお出ししています。
最近、明らかにみじん切りなんかが上達したのを実感します(笑)。上達というよりは、短時間で丁寧にやることが当たり前になった、という感じでしょうか。
次回は、この連載も月2回ペースで来て12回目になりますので、いったんの締めということで(ネタも一通り出ましたので年明けから月1回ペースに)、田舎暮らしで自分が、あるいは自分の中で何が変ったか、について書いてみたいと思います。それでは、次回までごきげんよう。
飲食店を始めることを具体的に考え始めたのは、ここ1~2年のことです。Webの仕事はそれなりに忙しくはありましたが、50歳を過ぎて先のことを少しずつ考え始めていたのも正直なところでした。そんなところに、思わぬきっかけで飲食店が浮上してきました。今回は、そのいきさつやお世話になった皆さんのことを。お店を開業できたのは、横浜・日吉のバー、復興ボランティア……、これらのご縁あればこそ、だったのです(冒頭の写真は、初冠雪の後に好天続きで雪が消えてきた富士山)。
今年の2月、富士山麓に大雪が降った。70cmを超える積雪で、1週間くらい外出できなかった家もあったようだ。店は、開店前の改装工事の真っ最中。既存店舗の外側に設置するテラス席の搬入が迫っていた。アマゾン.comで雪かき用のスコップを購入し、それを持って現地に向かった――。
今回は、飲食店を始めるまでのいきさつを書いてみたいと思います。よく「店を出すのが夢だったのか?」というようなことを聞かれますが、特にそういった目標を持っていたわけではありません。
実家は札幌・ススキノの居酒屋だったのですが、それだけに商売のキツさや難しさは分かっていましたし、一方で飲食というのは無くならないビジネスであることも感じてはいました。池波正太郎のエッセイに「戦後しばらくたって、ようやくそば屋などで外食ができるようになって、本当にうれしく心強く思った」というようなくだりがありますが、これを読んで、戦争体験はない私ではありますが、外食できることの喜びについては「分かるなぁ……」と思った記憶があります。
とはいえ都会の生活では、ユーザーの立場から踏み出すことは考えられませんでした。結果的に飲食店を始めることになって「ITだの何だのと回り道をして、結局、飲食店か」という、今は亡き両親の声が聞こえてきそうではあります(笑)。
実は、2011年の夏から3年にわたって、東日本大震災(3.11)で被災した福島の子供たちを富士山麓に呼ぶキャンプのボランティアをする機会がありました。1年目は河口湖の近くが会場で、その時は子供たちとただ遊ぶだけの「野球のオジサン」でした。「富士山こどもの国」で実施することになった2年目、なぜか厨房を任され、3年目には献立作りも含めて担当しました。このキャンプでの10日から2週間、学生ボランティアや他のボランティアの皆さんの力を借りつつ、数十人分の食事を3食作っていて「あれ? 何となくできるかも……」と思ったのが「飲食店プロジェクト」の始まりでした。
このサマーキャンプの主催者で、キャンプを手伝うように声を掛けてくれ、2年目に厨房を任せてくれた人物が、横浜に住んでいた時によく行っていた横浜・日吉にあるバーで知り合った長尾清さん。初めてお会いしたのは、もう15年以上前。現在は富士山麓にお住まいで、物件探しから内装業者の紹介、店舗デザイナーの紹介、実際の店舗の改装などまで、様々な面でとてもお世話になりました。今回の飲食店オープンは、この方のご尽力なしには実現できないものでした。
富士山麓を選んだのは、富士山こどもの国でのサマーキャンプでこの辺りになじみがあったことと、長尾さんが近くにお住まいだったこと、元は喫茶店という適当な物件があったこと、世界遺産に登録されたこと、涼しいところがありがたい――などいくつかの理由が重なっての結果です。もっとも、都会で店を出そうとするとお金もたくさんかかりますので、現実的な費用の範囲でというのも大きな理由ではあります。
田舎暮らしを始めるに当たって、この土地にご縁があったことは心強いものでした。どこかに移住するに際しては、その土地とのつながりはチェックしておくべきポイントの1つではないかと思います。もちろん、まったくの新天地、という選択もあると思いますが。
長尾さんは、福島県の相馬市と南相馬市の復興を支援するNPO「相馬リリーフ311」を立ち上げ、11年から継続的に現地の支援活動をしておられます。長尾さんご本人、およびNPOメンバーの皆さんの広い人脈により、過去3回のサマーキャンプをはじめとして、ポルトガルとの交換留学、米国の農場へのファームステイなど、現地の子供たちを対象にした様々な人材育成支援活動を展開されています。一応、私もNPOのメンバーなのですが、飲食店とWebの仕事とで手一杯になってしまい、申し訳ないことにすっかりコントリビュートできなくなってしまいましたが……。
もともと喫茶店だった店舗は、厨房を広げたり、壁の色などの内装を変えたりするだけでなく、「キューブユニット」という規格モノの構造体を利用して8席分くらいのテラス席を設けることにしました。
これは、標準サイズの立方体の構造体を組み合わせ、そこに窓やドア、天井や床などの仕様を指定してカスタマイズできるという製品です。仕様に沿ってあらかじめ工場で組み立ててから、完成品をトラックで運んできて設置します。
今回は、最小単位のキューブユニットを2個つないだ長方形にしました。これ、なかなかの優れもので、田舎暮らしで(ま、田舎に限りませんが)自宅にサンルームなんかを設置するような場合、普通に作るよりはるかに楽で安く済むと思います。
開店準備を進めていた今年の2月、富士山麓に何十年ぶりという大雪が降りました。それがキューブユニット搬入の前の週。「これはイカン!」とアマゾン.comで雪かき用のアルミのスコップを買い、雪かきをしに飛んで行きました。現地では70cm以上の積雪で、しばらく道路も通じない状況だったようです。
札幌育ちではありますが、ここまで本格的な雪かきは30年ぶり。「内地」の雪は濡れていて重いのでけっこう大変です。高校1年の時に野球で痛めて以来の腰痛持ちなので、腰に注意しつつキューブユニットの分と、そこまでトラックが入れるだけのスペースを半日かけて何とか作りました。
内装では、厨房を広げて水回りを変更し、トイレの洗面台にも温水が出るようにするなど、基本的な設備を充実させました。ガス・給湯回りは、キャンプでお世話になったガス設備会社に依頼。また、カウンター席を新設し、壁を塗り替えて新しいテーブルを入れたほか、キューブユニットの先にはウッドデッキを新設。天気の良い日には外でも食事ができるようにしています。このあたりの作業も、長尾さん(大工仕事がお得意です)と、ご紹介いただいた内装業者の方にお世話になりました。
調理器具や食器、グラスの類いも、いろいろな方に感謝です。業務用の冷凍庫は、廃業した飲食店のものを譲っていただきました。冷蔵庫と冷凍庫をいただいたつもりだったのですが、両方冷凍庫であることが開店直前に判明して冷や汗、急きょ、冷蔵庫は新規に調達した、というオチもあったのですが、それでも高価なものだけにとても助かりました。
食器は、喫茶店だったころのものをそのまま使わせていただいたり、いろいろな方に使っていないものをお譲りいただいたり。また、グラス類は、長尾さんと出会ったバーのご厚意で、使わなくなったものを一部譲っていただきました。だから、グラス、特にウイスキーを飲むグラスは充実しています。
調理器具は、これも飲食店を廃業された方からサマーキャンプ向けに多数貸していただいていたものを、そのまま使わせていただいています。業務用の鍋やフライパン、ザル、ボウル、秤など買いそろえるとけっこうな金額になるものです。食器も同様で、ナイフ、フォーク、スプーンなどをありがたく使わせていただいています。また、以前仕事をご一緒させていただいた方のお知り合いから、大きな寸胴鍋を2本いただいたのも、とてもありがたいことでした。
前述のサマーキャンプでの経験は得難いものでした。50人分を作り続けるのはけっこう大変でしたが、店を始めても「何とかなるだろう」という気にさせてくれました。もっとも、キャンプの場合は必ず食べてくれるので残る心配がなくて安心なのですが、店の場合は、売れるかどうか分からない状況でメニューに載せているものを常に用意しておくわけで、これにはまた別の工夫が必要ではあるのですが。
こういったことを含めて、もろもろ試行錯誤で始めたわけですが、以前に客として食べに行っていたお店のプロのシェフとのSNSなどでのつながりが、ヒントになったり元気づけられたりで、とてもありがたく思っています。
開店前に店に来ていただき、もろもろオペレーションについてアドバイスしていただいたり、休みの日にわざわざお店に食べに来ていただいたり、ショップカードをお店に置いてくださったり。前述の横浜・日吉のバーのバーテンダー、港北ニュータウンのインド人シェフ、恵比寿のビストロの腕利きシェフとソムリエのご夫妻など、本当に感謝するとともに、その腕と本業1本でやっておられることをリスペクトしています。
というわけで、その他にも多くの方々のお力添えをいただいたおかげでここまで来たのですが、横浜に住んで近くのバーに行っていなければ、そして3.11がなければ、こうはならなかったと思われるわけで、何か人生ってものを考えてしまいますね。
次回は、田舎暮らしとはちょっと離れるのですが、個人的な料理のバックグラウンドなどについて書こうと思っています。それでは、次回までごきげんよう。
飲食店を始めたとはいえ、これまで通りにWeb関連の仕事もしています。開店して半年ちょっとの田舎の飲食店であれば、売り上げなんてものは微々たるもの。Webの仕事との両立が大前提です。今回は、そんな日常の仕事の進め方や意識していること、私流のちょっとした工夫などについて紹介しましょう。これから“二足のわらじ”を考えている方々のご参考になればと(冒頭の写真は、10月16日朝の初冠雪の富士山。いよいよ冬です)。
朝6時前には起きてパソコンに向かう。寝ている間に来たメールをチェックして必要なら返信し、朝のうちにやるべき作業に取り掛かる。8時には、ほぼ完了。シャワーを浴びつつ同時に洗濯機を回す。天気予報をチェックして洗濯物をベランダか風呂場に干したら、クルマで15分の店に向かう――。
2006年に自分1人の会社を設立して以来、企業のWebサイトに関わる様々な仕事をしてきました。今年の2月、「取締役会(私1人ですが)全会一致で新規事業として飲食店を運営する」と議決(笑)。議事録を作成し、会社の定款に飲食店関連を追加。3月20日に富士山麓にお店をオープンしました。そして今でも、Webサイトのリニューアルやサイト運営のサポートなどの仕事を従来と変わらずさせていただいています。
おかげさまでこれらの仕事があって、しかもインターネットでほとんどのことができるからこそ、細々とした売り上げの田舎の飲食店をやっていられるというのが現実。Webの仕事と飲食店の両立が、現状の大前提としてあるのです。前回も書きましたが、店は火曜・水曜を休みにしており、Webの方は火曜・水曜がその週の仕事のピークです。
朝は、冒頭に書いたように貴重な仕事の時間です。夜は、腹が減っているし、店が忙しかったりするとそれなりの疲労感だったり、あるいは温泉帰りだったり。いずれにしても「まずはビール」なのです(笑)。晩ご飯を食べた後はもう頭が回りません。幸いなことに時差のある海外との仕事などはありませんので、基本的に夜は頑張らずに酒を飲んで寝てしまいます。どうしても片づけなければならないことがあるときは別ですが。
そういうわけで早起きなのですが、コツは前の晩に食べ過ぎない(特に炭水化物)、遅い時間に食べないこと。スッキリ腹が減って起きる、消化器系の内臓が疲れていない感じ、というのが私にとって大事です。既にいい年なのとビールのおかげで、明け方は4時過ぎるとトイレに起きますから、幸か不幸か「目覚まし要らず」でもあります(笑)。爆睡してしまい気付いたら昼だった、なんてことがなくなったのは、そういうことができる人生のフェーズももう終わったのか、とちょっと寂しい気もします。
朝起きたら、まずは枕元に置いてあるタブレットのNexus 7でメールやSNSをチェック。でも、フリック入力はどうにも苦手なので、返信や書き込みのためにパソコンに向かいます。いきなりパソコンに向かうより、タブレットが準備運動のような感じになってパソコンの前でスッと集中できるように思います。
とにかく、朝の2時間は素晴らしく仕事がはかどります。また、テレビがないために、調子の悪い政治のニュースなどに気を取られないことも集中できる要因の1つです。これは、夜についても言えることで、ついテレビを見てしまってだらだら起きているということがなくなりました(たまに飲みながらYouTubeでだらだらしますが:笑)。
飲食店の最大の問題は「その日の商売が読めない」ことです。土日なのにヒマなのはザラですし、平日のランチが意外に忙しい、なんてこともたまにあります。
そんな中で、パラレルに仕事をするわけで、早起きの次に大事なことは「とにかく時間ができたら前倒しでどんどん片づける」です。仕事に限らず、洗濯(天気に合わせて干すことも考えなきゃなりません)や温泉に入りに行く(ヒマなときに早じまいでサクッとひとっ風呂)、なんてことも含めて常に前倒しで物事を進めるようにしています。ま、夜のビールに差し障りがあるような仕事の残し方はしたくない、という一心ですね(笑)。
朝は、もし食材などが必要であれば24時間営業や早朝から営業している店に仕入れに行きます。次に、店への通勤途中で富士山が見えていたら写真を撮ります。御殿場市から裾野市に入ったあたりに、楽にクルマが停められて人工物が写り込まない撮影ポイントが1カ所だけあります。クルマから降りずに撮れるので、まずここで1枚。店の近くのポイントでもう1枚。店に着いたら、湯を沸かしたりしながら、店のブログに「今日の富士山」をアップします(こちらに富士山をまとめてあります)。こうしてメールのチェックなどしながら、掃除とランチ営業に向けた準備を進めます。
店がヒマなときは、できるだけ他の仕事を片付けます。普段なかなかできないところの掃除などをすることもあります。店舗ではありますが、ネット環境など含めて快適な仕事場という側面もあるので、仕切りで客席からは目につかないようにした仕事用のスペースも確保してあります。平日は、営業中でもメールは常にチェック。複数の案件に関わっているので、ビジネスタイムのメール・チェックは欠かせません。
幸いなことに現在のメーンの仕事は、信頼できる協力会社との役割分担など含めて、かなりルーチン的にこなれていて、何曜日には何をどこまでやっておけばよい、ということがはっきりしています。だから、空き時間、隙間の時間を有効に活用して前倒しすることができます。また以前に、客先常駐の開発案件に関わりながら他の仕事もこなしていたといった経験もありますので、ほぼその感覚で複数の案件に対応しています。
こういう状況下で「前倒し」とともに重要なのは、空き時間、隙間の時間についての「タイムスライス」という考え方です。コンピューターの世界では、TSS(time sharing system)という仕組みがあり、CPUのパワーを短い時間単位で多くのジョブに割り当て(タイムスライス)、それを刻々切り替えることで、各々のジョブにはコンピューターを占有しているかのように感じさせつつ、同時に複数のジョブを処理しています。
人間でも同じように、仕事をこなすために長い時間を連続で確保するというよりは、切り替えを素早くしながら短い時間を積み重ね、半日や1日というスパンで見ると複数の仕事が同時に遅滞なく進行している、といったことが実現できます。実際、忙しいビジネスパーソンであれば、無意識にそういう仕事の仕方をしているのだと思います。
例えばこの原稿も、秋晴れなのになぜかヒマな日曜午後、店のカウンターで、ネット通販で仕入れたコーヒーに付いてきた試供品を飲みながら書いています。今日のところは、あらすじまで、ブラッシュアップは隙間時間で、ですね。
前倒ししたいけれどなかなかできないのが、自分の会社の月次決算処理です。その日の領収書やレシートをその日のうちに入力してしまえば楽なんでしょうけれど、これが翌月のアタマにまとめて、となりがちです。ここは改善していきたいところですが、なかなか優先度が上がりません。カード払いの費用の確定タイミングがちょっと遅いので、単に前倒しても完了しないという事情もあります。
実際には、専用のフォーマットのExcelシートに「売り上げ」「外注費」「現金経費」「カード払いの経費」「銀行口座の出納」などを入力して、東京にいる会計担当者(委託しています)にメールで送ります。2、3日後に月次決算のシートが戻ってきます。さすがに今年3月の開店当初は、時間がなくてたまりにたまってしまいましたが、梅雨時のヒマな時期に取り返して、今では翌月の10日くらいには月次決算を確認できるようになりました。
以前は会計ソフトを使っていたのですが、会計ソフトは入力のUI(ユーザー・インタフェース)が使いにくいので、Excelのシートで専用のフォーマットを会計担当者に作ってもらいました。例えば、同じ費目が何度も発生するような場合、最初の1文字だけで同一シート内の同じ費目をExcelが勝手に表示してくれます(オートコンプリート)。行やセルのコピー&ペーストも楽です。これで、会計データ入力の効率がかなり上がりました。
1人でやっている会社の決算なので、大体のところは感覚的につかんでいるのですが、やはり数字でちゃんと確認することは大事です。3月に店を開店してからは、Web関連業務と飲食店を部門別に分けて把握するようにしています。一応、どちらの事業も単月黒字。ただし、飲食店は黒字とは言っても微々たるもの。開店準備からのトータルではまだマイナスです。
会計データの入力は、会社を始めて以来、何に金を使ったかを把握する意味もあってずっと自分でやってきました。ただ、いよいよ時間が無くなってくると、これも会計担当者に任せようか、とちらっと考えます。でも、領収書などの量がたかが知れていることと、一人会社なので公私両面があって、会社の経費にすべきものとそうでないものの判断がなかなか他人では難しい、ということがあります(会計担当の目でドライに判断すべきという話もありますが)。今のところ、通信費や高速道路のETCなど個人のクレジットカードで支払っているものもけっこうあったりするので、入力までお任せにしてしまうのはまだ先かな、と考えています。
自営業は経費が使えてイイね、なんて声もありますが、経費と言っても売り上げあっての経費ですし、売り上げがいくらなのかは自分が一番よく分かっているので、そうそう使えるものではありません。良いところがあるとすれば、経費を使うのもそれを承認するのも自分である、ということでしょうか(笑)。
何にお金を使ったかということは意外と忘れがちなので、日常的に会計データに接することは必要なことだと思っています(あちゃ、あんなおいしくない店で今月はけっこう使ってしまった、など)。あとは、売り上げと経費とで消費税を相殺できる、ということが個人の財布との違いですね。個人だと、消費税分が可処分所得を純減させてしまいますけれど。
実は、会社設立以来、ずっと同じ会計担当者にお願いしているのですが、多少の費用は発生するものの、経営状況の冷静な把握や適正な税務申告、各種の制度についてのアドバイスなど、いろいろな面でとても良かったと思っています。自分自身が会計方面は専門外ということもありますが、小さくても会社を運営するならば会計スキルのある人の支援は不可欠、と考えています。
最近、重要な仕事道具となるパソコンを新調しました。これまで1366×768ドットだったデスクトップ環境をようやく1920×1080ドットにしたのです。新しいパソコンは1.3kgくらいのノートブック。これを持ち歩くのでどこでも1920×1080です。アパートで使っているバックアップ用のパソコンは、2年ほど使っていたノートですが、外付けディスプレーの1920×1080の画面をメーン画面として設定して使うことにしました。これなども、表示できる情報量が増えることで、仕事の効率がかなり向上します。
あと大事なのが、キーボードです。新しいパソコンは、キーボードの打ちやすさを重視して選んだのですが、バックアップに回したパソコンは、薄いのは良いのですがちょっと打ちにくいものだったので、いつも本体キーボードの上に気に入ったキーボードを乗せて使っていました。仕事の効率に直結するので、出張の際にもキーボードを持ち歩くほどでした。それと、タッチパッドだけでは作業効率が悪いので、小さめのマウスも持ち歩いています。
ネット環境は、連載の最初のほうでも書きましたが、アパートはUQ WiMAX、店はNTTのADSLです。どちらも通信量の制限がないことを前提にした選択です。UQ WiMAXはエリアに若干の不安があるので、出かけるときなどはバックアップとして楽天ブロードバンドのSIMを挿したドコモのXi(クロッシィ)のモバイルWi-Fiルーターも持っていきます(バックアップなので月額1000円切る料金プラン)。出張の時もこれでまず問題ありません。御殿場線が通るような山の中でも、Xiならほぼ全区間でつながります。
複数のパソコンを使っているので、ローカルドライブにはなるべくファイルを置かないようにしています。Google Driveを使ってほとんどのファイルをクラウドに保存。また、WebブラウザーはChromeをメーンにしています。Googleアカウントにログインすると、複数のパソコンのChromeの間でブックマークなどを同期してくれるので、すぐに使い慣れたパソコンのブラウザーとほとんど同じように使えるようになります。このあたりの環境は、立ち回り場所が多かった頃に試行錯誤で整えてきたこともあり、今回のように新しいパソコンを買った場合でも、かなりスムーズに移行して使い始められるようになりました。
1泊で東京に出るときは、ホテルになるべく早めにチェックインして晩ご飯の前にはその日にやるべきことはすべて片付けます。よく使うホテルチェーンの会員になっているので、一般客は16時チェックインのところを15時にチェックインできるので助かります。ホテルの回線は速いし部屋も快適なので、とても集中できます。
チェックインまで時間があるときは、喫茶店などで仕事をしますが、最近はパソコンもモバイルWi-Fiルーターもバッテリーでの連続作動時間が長いので、コンセントの有無も気になりません。陳腐な表現ですが、「いつでもどこでも」仕事ができる状況をキープしています。よくSOHOなんて言いますが、むしろ「オレがオフィス」くらいの感覚です(笑)。
次回からは、店を出すまでの経緯や店舗の改装、そんな中でいろいろな面でお世話になった皆さんのことなどを書こうと思っています。それでは、次回までごきげんよう。
田舎暮らしとはいえ、週に1回は東京出張がある。その点、富士山麓は東京・横浜から遠すぎないのが良いところ。たいてい日帰り、たまに1泊。クルマ、新幹線、JR御殿場線/東海道線などで仕事と“都会を補充”しに行く。今回は、そんな出張のあれこれ、ちょっとした工夫や節約についてご紹介しましょう(冒頭の写真は、秋晴れの富士山。今年は雪が遅いようです)。
アパートを朝7時20分くらいに出ると、三島発8時12分の新幹線に間に合う。腹が減ったのをグッと我慢して品川まで50分弱。9時には到着。普通の通勤とあまり変わらない。都会で暮らしていた頃のように、駅前の立ち食いそば屋でごぼう天や春菊天の乗ったそばを食べ、水をコップに2杯ほど飲み干してから打ち合わせに向かう――。
富士山麓の田舎に移って飲食店を始めたとはいえ、従来からのWebの仕事も続けています。仕事があるからこそ、売り上げが未知数の田舎の飲食店を始められたわけです。店は火曜・水曜を休みにしており、Webの方は火曜・水曜がその週の仕事のピーク。水曜はほぼ毎週東京に出張です。
基本的に休みはありません。もっとも、自営業なんてのはそんなもので、ここ数年ずっと同じような感じです。はたから見れば、いわゆる「ブラック」に近いので、自分1人でやってる分には良いですが、これに付き合わせるわけにはいかないので人は雇いません。人を雇わないから回る、とも言えますけれど。
おおまかな1週間の配分は、土曜・日曜は飲食店がメーン、月曜は半々、火曜・水曜はWebがメーン、木曜・金曜は半々、といったところなので、東京での打ち合わせは、申し訳ないことではありますが、無理を言って火曜か水曜に集中させていただいています。夜のミーティングや酒の席は火曜の夜だけです。水曜の夕方も不可能ではないのですが、その後はクルマの運転があるのでアルコールなしです。
東京へは、自分でクルマを運転して行く、三島にクルマを置いて新幹線で、あるいは御殿場にクルマを置いて在来線で(JR御殿場駅から御殿場線で国府津まで行き東海道本線、など)、さらに高速バスで渋谷や東京駅まで、といった交通手段があります。
クルマで行くのは、渋滞さえしなければドア・ツー・ドアで一番早いし(御殿場インターから横浜町田インターへは順調だと道路表示板での所要時間で50分です)、高速代やガソリン代についてもリーズナブルな範囲なのですが、東名高速の川崎インターの先はたいてい首都高環状線までずっと渋滞なのであまり使いません。火曜に1泊するときは、時間にちょっと余裕があるのでクルマで行くこともあります。
道路の状況によって時間が読めないという同様の理由で、高速バスもほとんど使いません。バスは、JRの在来線とはほぼ同じ運賃で「パーク&ライド」で駐車料金を割り引いたり(JRはそういうことをしないのがダメですね)、無料駐車場があったり、渋滞のときは用賀で降りて東急・田園都市線に乗ることもできたりするのですが、東京での目的地にちょっと不便だったりでなかなか使う機会がありません。
そういうわけで、やはり鉄道がメーンになりますが、在来線は新幹線よりは安いのですが、さすがに時間がかかります。JR御殿場駅から御殿場線で国府津まで50分、さらに東海道線で約1時間です。
御殿場線の場合、1時間に1本か2本と本数が少ないのも困ります。それでも、上りのときは国府津まで行けば東海道線は本数が多いのであまり問題ないのですが、帰ってくるときが大変です。東海道線で国府津に着いたら接続が悪くて1時間待ちなんてこともあります。山北止まりの列車とか信じられません(苦笑)。国府津駅前にはラーメン屋くらいしかないので、そんな時は東海道線であと2駅の小田原まで行って、海鮮丼などを食べて戻ってきたりします。
新幹線は、冒頭にも書いたように乗ってしまえば三島から品川まで1時間かからないので、横浜の西のほうから都内に出るのと変わらないか、むしろちょっとマシなくらいの時間的距離感なのですが、何と言っても運賃が高い。片道4000円(!)もするのです。三島の1日1000円くらいの駐車場にクルマを置いて、往復するとそれだけで1万円近くかかります。まさに、時間を金で買う感じです。
JRの在来線は人身事故が多いということもあって、アポの時間が決まっている朝は新幹線を選びます。先日、火曜の午後に東海道線で移動していたら、平塚あたりで1時間くらい足止めを食らってしまい、横浜到着後に予定していた作業を車内で終わらせないと間に合わない、ということがありました。午後の空いている時間だったので座っていたのも幸いでしたし、UQ WiMAXのエリア内だったので事なきを得ましたが。
そういうわけで、朝は時間が惜しいので三島から新幹線、帰りは東海道線で三島まで戻ってくる、なんてことをよくやります。1時間くらい余計にかかりますが、片道で2000円弱の節約になります。何より、小田原を出てから熱海までの間、特に根府川のあたりで眼下に広がる相模湾の景色は、新幹線では味わえない「ぜいたく」だとも思います。御殿場線のほうは、山間の風景と単線の風情が楽しめます。御殿場と山北では、駅前の蒸気機関車が往時をしのばせてくれます。
御殿場から在来線でも、三島から新幹線の場合でも、どちらにしても駅まではクルマ。駅の近くの駐車場に止めておくので、帰りの電車でビールというわけにはいきません。ビールは、帰りに温泉に寄ってさっぱりしてアパートに戻ってから。アパートでのビールのために電車に乗る前に駅弁(横浜の崎陽軒の傑作「シウマイ弁当」のことが多い)を買ったりします。
三島の駅の周辺には、新幹線に乗るビジネス客相手の駐車場がたくさんあります。1日の駐車料金は、駅前の駐車場では1500円、徒歩2分のところで1400円、3分で1300円、5分で1000円、さらに離れると900円という感じで、離れたところから順に埋まっていく感じです。隣接した同じ1000円のところでも、駅寄りは1泊すると追加料金300円で2300円になりますが、反対側は単に2日分で2000円などと細かい違いもあったりします。
駐車場で働いている人の中には、すごい才能の持ち主もいて驚かされます。
「東京方面ですか?」
「はい」
「新幹線ですか? 在来線ですか?」
「新幹線です」
「では、この時間ですと何時何分発で、あと8分あります」
場合によっては、「三島始発なので確実に座れます」などと教えてくれます。三島駅の時刻表が完璧に頭に入っているのですね(ダイヤ改正時期が心配ですが)。機械式の駐車場にはない、人ならではの「サービス」とも言えるかもしれません。
ただし、この人がちょっと問題なのは、こちらの質問には答えずに機械のように一方的に本人が有用と思っている情報を提供し続ける、ということでしょうか(苦笑)。
「次の始発は、何時ですか?」
「駅への近道は、次のフェンスを右に曲がってください」
というあんばいです。料金窓口係で、客に起こされるまでいつも居眠りをしているおじいさんとか、なかなか味わい深いのが駐車場ビジネス。毎日、どこもほぼ満車なので、1日1000円の駐車場で50台と仮定して計算してみると、1日5万円、月に150万円、年間1800万円、ということで、45年前(今年は新幹線開業50周年ですが、三島駅に新幹線が止まるようになったのは5年後の1969年だそうです)に新幹線開通に合わせてご先祖様から受け継いだ農地をつぶすことを選んだのだろうな、という感じがします(まったくの推測ですが)。
火曜にアポがあるときなどは1泊します。その場合は、たいてい横浜・関内のビジネスホテルに泊まります。駅に近くて都内よりかなり安いのが大きな理由ですが、今年3月まで住んでいたところだけに、よく行っていたお店に顔を出したり、気に入っている地ビール(最近ではクラフトビールと呼びます。ちなみに、関内、馬車道、桜木町あたりはクラフトビールのメッカです)を飲んだり、中華料理やトンカツなどの横浜の味を楽しむ、というのも目的の1つです。
最寄りの駅がJRの関内や、みなとみらい線の日本大通りなので、JR京浜東北線や東急東横線で都内に行きやすく、翌朝の打ち合わせなどにも困ることはありません。東京に泊まらずに横浜方面に泊まるというのは、悪くない選択肢だと思っています。
よく泊まる格安ホテルチェーンでは、都内にも各所にホテルがあるのですが、朝の時間的な余裕はあまり変わらないこと、料金が関内より2000円弱高いことなどの理由から、やはり関内を選んでしまいます。
クルマで行くときでも、都内より横浜の方が駐車料金が安いというメリットがあります。ホテルの1泊駐車料金も安いですし、周辺の駐車場も安い。最近の都内の駐車場は3時間止めると3000円近く(ほぼ上限料金ですね)になってしまいますが、横浜だと場所によっては1500円くらいで止められます。東京までの往復の電車賃を足してもまだ安いですね。高速道路にしても、横浜町田インターか青葉インターで降りればよいので、都内に入って首都高まで使うよりはかなり安く済みます。
出張したときには、メーンの打ち合わせを終えたら、ビックカメラでパソコンや周辺の小物を買う、本屋に行く、安い眼鏡屋に行く、役所で各種手続きをする、銀行で通帳記帳や振り込みをする、なじみの床屋でさっぱりする、キンコーズで仕事の資料やショップカードなどを印刷する、などと都会ならではの用を足すわけですが、やはり都会の楽しみは食べるもの。
駅そばや牛丼をはじめとしたファストフードやチェーンの喫茶店、さまざまなジャンルの飲食店が、これでもかと隙間時間に誘惑してくるわけで、これは田舎にはない世界です。隙間時間に腹が減っても田舎では何も食べません(食べられません)が、都会には、かつてよく食べた懐かしいものから新しい発見まで、楽しみがたくさんあります。選ぶとしても、1日せいぜい頑張っても5回くらいまでですし、人生の限られた食事の回数の中で無駄弾は撃ちたくないのでなかなか悩むところです。
駅そばをはじめとして、価格が安いものは本当に安い、というのも都会ならでは。この価格だとよほど客が多くないとビジネスとして回らないよな、というものがたくさんあります。田舎は人が少ないので、そんなに極端に安いということはありません。
そして何より都会ならではなのが、ジャンクフード。揚げ物が乗ったりご飯モノとセットになった朝の駅そばに始まり、ラーメン、カレー、焼肉、トンカツなどなど、炭水化物と塩分と油には事欠きません。ランチ、間食、夜の居酒屋、食べ放題・飲み放題まで、いつでも食べられてしかも選択肢が無限に近い。そしてそれがたいていジャンクです(残念ながらいわゆる高級店には行かないので、あしからず)。
田舎暮らしでめっきり飲みに行かなくなったので、都会暮らしをしていた3月まではほぼ毎日毎晩これだったのか、と思うとちょっとがくぜんとしなくもないですが、「都会の本質はジャンクと見つけたり」なのです。よく、都会のストレスで太るなんて言いますが、ストレスではなくて炭水化物や塩分、油の多いジャンクなものを食べるからなのだと思います。ま、ストレスのはけ口としてジャンクを求める、ということもあるかもしれませんが、都会は食べる機会がとても多い、食べることに困らない、そしてたいていのものがジャンクなのです。
というわけで、こうやって時々“都会(ジャンク)を補給”しに行くわけですが、結果として、日帰り、1泊にかかわらず、都会で2キロくらい体重が増え、1週間後の次の都会行きまでにそれが元に戻る、ということの繰り返しになっています。
次回は、冒頭でちょっと触れた、飲食店とWebの仕事を日常的にはどんなふうに進めているのか、というあたりを書いてみたいと思います。それでは、次回までごきげんよう。
※冒頭で「今年は雪が遅い」と書きましたが、本稿を書き終えた後の10月15日早 朝、山頂部に雪が積もっている様子が地元の写真家により撮影されています。